第6話
「だぁ~、やめじゃ止め」
あのキキスが大の字になって人目も憚らずに地べたに寝ころんだ。
「どうよ、渾身のライブは」
気持ちの良い笑い声を上げながら、マコトがキキスに覗き込むようにして言う。
「ライブ? が何かはよう分からんがな、良き舞台だったとは思うぞ」
「それなら上々だ」
「一つ聞きたい、なぜあの二人なのだ。ここには我も含めて大勢がおる。色んな混血種ではあるが見目が良い者達も多いはずだ」
精霊やエルフといった、外見で目を引く奴等が多いのは確かだ。
「知ってるか? あの二人だけが星を見ていた。知らんだろうなぁ、空を見て木々を眺め、遠くを語り、夢を語ったのは彼らだけだったんだぞ」
キキスが首を傾げた。
オレもフォルと目を合わせて分からないと互いに首を振る。
「ここは楽園なんだろうな。戦いもなく、皆が仲良くう暮らしている。上から見ていたが、確かに良いところだよ。でも、未来もないな」
寂しそうに空を見上げて、マコトはそう言い切った。
「貴様に、なにが……」
「別に悪い事じゃなないと思う。変わることが良い事って訳じゃ無いってのも理解はしているつもりだ。けど、未来は常に変わり続けるぞ。上をちゃんと見たことあるか?」
マコトが世界樹を指さして言う。
「なにを、いってる?」
「この世界樹ってのは、花が咲かないらしいな? そりゃあ、見たことが無いからか?」
マコトが指さした先に、小さく葉っぱだけではなく、ピンク色の花が咲いていた。
「バカな、花など……」
「ここに降りてくるまで、俺はずっと上から色んな奴等の会話を聞いてたが、皆同じ事しか言わん。その二人だけだったぞ楽しそうに明日の話しを笑いながらしていたの」
キキスがよろよろと起き上がって、世界樹の花が咲いている場所まで飛んでいく。
「あぁ、飛行魔法なんてモノが使えれば、苦労せずに降りてこれたのだろうか」
すっごく羨ましそうにキキスが飛ぶ姿を眺めてるせいで、さっきまでの二枚目でカッコいい感じが台無しになっている。
「本当に、花が咲いておった」
「やっぱ俺じゃあ、そんなもんか。いつか満開にしてみたいもんだな」
悔しそうなのに、出て来た言葉には嬉しそうな感じがする。
「他にも色々と理由はあるが、この二人は何よりも負けず嫌いみたいだしな。声も性格も面白そうだ。見目が良いだけじゃあダメだ。性格が良いだけじゃあ続かない。こんな環境下で育ったにしては向上心が高く、誰に何を言われようとも己の意志を変えようともしない。それくらいでなくてはアイドルは務まらんだろう」
マコトが一人で語り、何か納得して頷いている。
「本人達の意志は無視かえ?」
「コレだけの逸材を諦めて他を探す意味などないだろう? 納得してくれるまで付きまとうさ、地獄だろうと天の果てだろうとね」
無駄に色気の籠った声色でオレ達を見つめてくる。すぐさまオレとフォルの背筋からゾワリとした鳥肌が立ち始めた。
「本当、妙な奴に好かれたモノよのぉ」
「かわいそうな目でこっちを見るなら助けろババァ⁉」
「むりじゃ」
「即答ですか⁉」
「だって我は負けたんじゃぞ」
お手上げだと言うように肩を落として、哀れむ様にオレ達に対して言う。
「ふははは、そういう事だ。諦めなさいな」
「なっ、誰がお前みたいな奴を――」
「ふふん♪ 見とれてた癖にぃ~」
「ぐっ、ち、違わい」
言葉に詰まってしまったオレに満足そうな笑みを向けて、次は隣のフォルを見る。
もっと頑張れよという残念そうな顔で隣のフォルが睨んでくるが、今は無視だ。
「こんな魔法、使ってみたいんでしょう?」
悔しそうに何も言わずに、右の頬をピクピク痙攣させている。
あぁ、あれは本気で悔しがってる顔だな。しかも、言い訳の一つも思い浮かばない程に悔しい感じのヤツだよ。何も言い返せないんだね。
分かる、わかるぞフォル。
「では、今後の方針を決めての話し合いは後日という事でいいかな?」
高笑いをするマコトを、この場に居る誰もが止められない。
ゲリラライブマーチ 風月七泉 @cherlblue
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