第29.5話 ミナside

 オズワルドとクロヒが魚を取りに行っている間、スノウ達はすぐには寝なかった。

 折角女の子2人なんだからと、2人で何やら話をしているようだ。


「ねぇ、ミナちゃん」


「何?」


「ミナちゃんはさ。オズワルドくんと幼なじみなんだよね」


「そうだけど」


「オズワルドくんってどんな人なの?」


 以前、オズワルドが幼なじみと聞いていたので、スノウはどんな人なのか少し気になったのだ。

 

「だって、オズワルドくんって、あまり喋らないし。喋っても雑談というよりかは事務連絡とか必要なやり取りだけだから……」


「……そうかな」


 ミナはそう思っていないのか、スノウの言葉を疑問に思っているようだった。


「そうだよ。だから、ちょっと気になるんだよね」


「うーん……」


 どこから話せばいいのか、どんなことを話せばいいのか。

 ミナはかなり悩んでいるようだった。

 そして、悩んだ末にミナはゆっくりと話し始めた。


「オズワルドは、まず、変」


「へ、変?」


 思わぬミナの第一声に、スノウは素っ頓狂な声を上げた。


 そして、ミナは昔の思い出の一端を語り始めた。


◇ ◇ ◇


「俺は……誰だ?」


「……?」


 突然のオズワルドの一言に、ミナは困惑した。一体、彼に何があった?

 ミナはオズワルドを凝視していた。

 

「……ああ、そういう事か」


 ……どういう事だ?

 ミナは兎に角混乱していた。


「ミナ、なんでもない。ある種、1つの可能性を垣間見ただけだ」


「……頭おかしくなった?」


「失礼だな。俺は別に変になんかなってない。いや、変になったと言えば確かに変になったと言えなくもないが……」


 この日を境に、突然オズワルドの雰囲気が変わった。

 今までのような物静かでぶっきらぼうな性格は変わることは無かったが、それに少々の博学染みた知識と、挙動不審さがプラスされていた。


 例えば――。


「魔物……」


「魔物がどうかしたの?」


「いや、魔物は生物とは似て非なるものって記述があるが、それは多分違うのではないか? 魔物は食べれるし、魔物を食べることによって栄養も出ることが出来る。魔物は生殖機能もあるし、自立して動くことも出来る。生物として十分なはずなんだ」


「……うん?」


 ミナもオズワルド並に勉強はしてきたはずだし、引けを取らない学力を持っているはずだった。

 だが、今の言葉は理解ができない。


「つまり、魔物は生物に似て非なる存在などではない。何らかの現象によって魔力を有し、生物が魔物になってしまったという方がまだその教科書よりまともな論だと思う」


「なる……ほど」


「そうなるといつ頃から魔物が生まれた……? 恐らく魔王の登場近くか……? それならしっくりくる。いやでも……」


 オズワルドはひたすらブツブツと呟き、教科書にひたすら異を唱えていた。


 ――そしてまたある時は。


「ホトトギスの句に合わせたら、俺は何になるだろう」


「……は?」


 また始まった……とミナは頭を抱えた。


「ホトトギスは鳥のことだ。人前では滅多に鳴かない鳥を、偉人ならどう鳴かすのか考えて、分かりやすく性格を伝える。例えば、鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス。とかな」


 そいつ中々恐ろしいことを言いやがるな。

 そのよく分からない話を延々と聞かされ、ミナの心の中は大混乱に陥った。


◇ ◇ ◇


「これが、オズワルドの全て」


「へぇ……意外だなぁ。オズワルドくん。そんな感じの人に見えないのに」


 学校ではそもそもほとんど話すことは無いのに、ミナとこんなに仲良さそうに話す人だとは思わなかった。


「それは、私がやめてって言ってるから。あんな恥ずかしい姿。見せたくない」


 幼なじみから見て、平常運転のオズワルドは恥ずかしい姿らしい。


「えーそうかな。私は個性があっていいと思うけど」


「それ、いいと思ってないよね」


「ううん。そんなことは無いけど……」


「……もう寝る」


 ミナは恥ずかしくなったのか、布を1枚自分にかけて目をつぶった。


「……よっと!」


「ひゃっ」


 スノウが突然ミナの掛けた布へ潜ってきた。

 そのせいで、ミナは変な声が出てしまい、顔が赤くなる。


「もう……。知らない」 


「ごめんってばー」


 そんなやり取りをしながら、2人は時期に眠たくなり、ゆっくりと眠りについた。

 大自然に囲まれ、木漏れ日が彼女達に降り注ぐ。

 それはとても気持ちよさそうだった。

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