3 旅人 男性用
あらすじ>
ここは酒場。町の住民や商人、旅人から盗賊までが集う場所。そんなところで、あなたはある女性に話しかけられました。
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(顔を上げて)
どうした?こんな男捕まえて。悪いが、面倒ごとに巻き込まれるのだけは勘弁してくれよ。
で、何の用だ。
…ふん、兄を探している?悪いなお
(驚いたような顔をして)
ちょ、ちょっと待った!お
あ、いや、ちょっと見覚えがあっただけだ。すまない。
(少し考えてから)
もしかしてだが、お嬢ちゃん、君は…師匠の娘さん…か?
ああ、ああ、そうか…君が…そうか…君が…
あ、いや、すまない。で、探しているのは誰だ?師匠か?君の助けになろう…いや、手伝わせてくれ、頼む!
え…俺を、か?
どうして俺のことを…?
(女性の話を聞いて)
そうか、君は何も知らないのか。
…ああ、いいさ。話そう。
さ、椅子に座んな。何か飲むかい?…いらない?そうか。
(覚悟したかのような顔をして)
そうだな…うん…君の…君の父親は……死んだよ。それも、俺の目の前で。
一瞬だった。その光景が今も脳裏に浮かぶ。地獄だったさ。
俺は、もともと兵士としてこの国の辺境に配属されて、そこで君の父親でと出会った。しばらくすると俺は師匠と呼ぶようになったな…今となっては不思議だが、本当に師匠のように思ってたんだ。
それからしばらくして、戦争がはじまって、だんだんと戦況は悪化した。俺や師匠のいた部隊も、前線に送られた。…改めて言うが、本当に地獄だったよ。
けど、俺たちは生き残った。生き残ったが、それからも地獄だった。
しばらくは文通してたし、君も知ってるだろ?敵の鉱山で働かされたんだ。坑道はまともに整備されてないから、事故で何人も死んだよ。次は、次はもしかしたら俺の番じゃないかと不安だった。
(ため息をつく)
…ああ、ちょうどそのころだ。
ちょうどそのころ、師匠と数人が脱走の計画を立てだした。深夜見張りの交代するタイミングで逃げ出そう、ということになった。
そして、当日。その日俺は鉱山で足をくじいてしまって、参加できなくなってしまった。けど、計画は実行されることになった。いや、俺が先に行けといったんだ。
夜、別れ際に師匠から「もし、俺が死んで、お前が生き残ったなら…その時は、娘と妻によろしく伝えておいてくれ」そういわれた。そして、返事をする前に行ってしまった。
(再びため息をつく)
朝、看守にたたき起こされて広場に連れて行かされると、脱走を計画したメンバーが張り付けられていた。
失敗したのか、俺はとっさに思って師匠の姿を探した。
いないでくれ、どうか逃げ延びてくれと何回願ったことか。
…いたさ。すぐに見つけた。
師匠と目が合ったのに気付いた。気づいたら俺は駆け出してた。制止する兵士を振りほどこうとしながら。
けど無意味だった。
それから数週間後、突然解放されたんだ。あと数週間生きていれば、師匠は帰れたんだ。
(酒をのみ、少し笑う)
ああ、酒は美味いな。こんな酒、あの時はもう2度と飲めないんじゃないか、なんて思ったな。
…つらい話だっただろう?
ごめんな。
さ、お家へお帰り、きっとお母さんが心配しているだろうから。
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