第二章:本州解禁編
第27話:富士山へ
翌日の放課後、アップデートが終了した東京の街は多くの人で賑わっていた。6割くらいのプレイヤーは初期装備、残りのプレイヤーは道具の買いだめをしている様子からやはりテストプレイヤーが追加されていることと、第一期のテストプレイヤーは遠くに遠征することが何となく分かる。
江戸城の自室から少し様子を見た後、富士山へと向かい始めた。
「先輩、帰り道で調べてたんですけど富士山まで丸一日以上かかりますよ?」
「今まで行ったことのある街にはマップからワープできるらしいからそれで横浜まで行こう。そのあと補助魔法と【エンチャント・風】で加速すると時間が短縮できる」
「なるほど。でも【エンチャント・光】の方が早いんじゃないんですか?」
「あれは試してみたけど多分今のレベルだと体がもたない。あと20レベル……レベル70まで上げてどうにかって感じだね」
実際昨日の夜、移動を楽にするために香音が落ちた後に試したのだ。結果、50メートルを1秒くらいで走れたが、体が追い付かず、風圧で半分以上体力が削れた挙句に【筋肉痛】の状態異常にもなった。強い力には代償が伴うというのはこのことだろうと全身、特に足で感じた。
「じゃあ行きましょうか」
マップから横浜の街を選んで移動すると一瞬で横浜の街の前に立っていた。
「ここに来るのもイベントぶりだな」
「そうですね。じゃあ補助魔法掛けますね。えいっ!」
「俺も【エンチャント・風】」
「あ、凄い。スキルレベル上がってるから魔力消費量が下がってる」
「あ、それ私もです。便利ですねこれ」
「じゃあ行こうか」
俺達は富士山へ向けて一歩踏み出す。明らかに早い。景色が高速で後ろへ流れていき、遠くの富士山がだんだん近づいてくる。
「速い!速いですねこれ!風になったみたい!」
香音が興奮しながら満面の笑みで言う。
「まあ実際風になってるようなものだけどね、おっと敵だ」
目の前には大きいバッタが居る。1メートルほどのサイズだが、体が大きくなれば当然強化されるわけで、バッタが跳躍すると十数メートルの高さまで跳ぶ。
「うわ、すごい!止まって戦いますか?」
「いや、時間がもったいない。経験値だけいただこう【瞬斬・居合式】」
加速した斬撃はバッタを両断し、再起不能にする。
《新スキル【
居合い斬りの効果で香音よりも先に進んだ俺は香音を待っている間にスキル効果を確認する。どうやら【エンチャント・風】を一時的に自動で発動して【瞬斬・居合式】を使ってくれるらしい。勝手にやってくれるのは便利だ。
「追いつきました先輩」
「よし、行こうか」
しばらく進み、夕方になるころ、広大な森とそこに隣接する小さな宿場町を発見する。
「ここは……?」
「これって青木ヶ原樹海、通称富士の樹海って呼ばれているところじゃないですか?」
「盲点だった……。そうだ、現実みたいに五合目から登れるとかあるはずないよな……。忘れてた」
俺達は攻略を連休である明日からに回し、樹海前の宿場町で一度休むことにした。
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