第23話:伏線

新環境への移行まで残り二週間ほどになったころ、俺と香音はレベル上げのために街の外の平原に出ていた。以前と変わり、時々強いモンスターも沸くようになっているらしい。さっそく、以前より強いモンスターが現れた。

「前までスライムとカマキリしかいなかったのに種類と数が増えたね」

「そんなこと言ってる場合じゃないですよ。目の前にいるのどう見ても人間サイズのスズメバチ二匹ですよ?」

そう言っている香音にも余裕はあるらしく、突っ込みに勢いはない。

「さて、スズメバチの針って最近の取引ではいい値段が付くらしいよ。ギルド内だったら手数料掛からないでさらに儲かる」

「じゃあ針を傷つけないで倒せばいいんですね?」

「そうだね、部位によって取引価格が違うのも余裕があるときに頭に入れていくといいよ」

「じゃあ戦いましょうか」

香音が弓を構えて遠くの蜂を狙う。それを確認して俺は近くの蜂と対峙する。

「【エンチャント・光】」

輝く刀を全力で横に振る。刀身が通った部分から飛ぶ斬撃が出る。しかし、数メートルも進まないうちに消滅してしまう。

「はぁ、素早さ重視にしても剣先の速さが足りないか」

俺は諦めてゼロ距離に近づき、胴で真っ二つにした。

「こっちも終わりましたよ。子の針って何に使うんですかね?」

香音は30センチくらいの針をもって戻ってくる。

「ああ、武器に使われるみたいだよ。暗殺者とかが使う」

なるほど、と香音は納得しながら針を仕舞う。

「ところで先輩、ため息ついてどうしたんですか?」

「あ、バレてた?」

俺は茶化そうと少しふざけて答えるが、香音は黙って頷く。

「・・・話すしかないか。前回のイベントでやっぱり遠距離攻撃が必要だと思ってね。魔法を普通に撃つだけだと他の人には勝てない。だから独自に開発してた」

「でもうまくいかないと。そう言う事ですか」

「まあスキルを作るってのが難しいことは理解してる。この世界だとレベルを上げたり、スキルを使ったり、教えてもらうのが一番早い。でもゼロから作るのはロマンがある」

「ロマンですか」

香音がつぶやいたとき、周囲が陰に覆われた。上空を見上げると巨大な鷹が飛んでいる。

「ロマン以外だとこういう時に対処できるとかね」

鷹は地上の事など気にも留めずに悠々と飛行を続ける。

「これって次回のイベント予告なのかな」

「伏線かもしれませんね」

「いや流石にあれとは戦える気がしない。龍より大きい鷹ってどういうことだよ」

「まあ明らかに戦いにはなりませんよね」

俺たちは顔を見合わせて、ため息をついた。

「もっと強くならないといけないのか。レベル40を超えてもまだ」

「そもそもレベル上限ってあるんですかね」

俺たちはその後も狩りを続けるのであった。

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