第16話:特訓週間②

ブレイクと別れてから少し歩くと、遠くに横浜の街が見えた。横浜の街もリアルとは違い、街の周囲を石壁で囲われた城塞都市になっているようだ。

「あれが横浜の街ですね。なんか想像よりも守りが堅そうですね」

「そうだね。でもブレイクが言ってた龍ってどこにいるんだろう?」

横浜の街の城門に着くと門番が居て、門を開けてくれる。

「あの、すみません。龍が居るって言われて気になってるんですけど今は居ないんですか?」

「ああ、あいつはいつも気まぐれで街の上を飛んでるんだ。まあそのうち来るだろう」

気になって門番に質問してみるとそのような回答を得た。

横浜の街に入るとそこは中華街だった。中国様式の建築が立ち並び、露店では小籠包などが売られている。β版だが活気があるのはNPCが居るからだろう。

「実は横浜中華街って初めてなんですよね。ちょっと食べ歩きしましょう!」

「この世界って食べ物は味覚を感じられてゲーム内の満腹度が回復する仕様だったはず。いくら食べても太らないらしいよ」

そう言った瞬間、香音の目が輝いた。

「え?ほんとですか!?それなら早速あそこのお店で食べましょう!」

香音に手を引かれて露店に寄る。

「言い忘れてたが金はかかるぞ。大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。だって私は武器買い替えてませんから」

そう言う香音は既に小籠包を手に入れて喜んでいた。

「おいしいですよこれ。先輩も食べますか?」

香音が新しい割り箸を差し出してくる。

「じゃあ一個だけ貰おうかな」

お箸を受け取って小籠包を一つ食べる。味は冷凍食品よりも数段美味しいレベル。中の熱々の肉汁も再現されているようだ。しかし、飲み込んだ後の感覚が全く感じられず、17年間生きていて初めての感覚を味わった。とても不思議な感覚だ。

「龍が出たぞ!!!」

小籠包を食べていると、遠くから誰かの叫び声と共に、聞いたことのない咆哮ほうこうが聞こえる。直後、頭上を凄まじい風圧と共に巨大な蛇のようなものが飛んでいく。これがうわさに聞いた龍だろう。風圧は露店の商品をなぎ倒したり、建物の瓦を落としたりするなど、甚大な被害を街に与えていった。

「あれが・・・・・・龍・・・・・・!?」

香音が上を見上げながら愕然としている。

「そうらしいね。あれとは今は戦いたくないな。勝てるビジョンが全く浮かばない」

長年ゲームをやっているとなんとなく敵のキャラデザインなどから強さが分かるようになる。そしてさっきの龍は明らかにボスキャラ、しかも高レベルのダンジョンの最終階層にいるような奴だ。今のレベルではパーティー1つで勝てるような優しい敵ではないだろう。

「いずれはあの龍とも互角に戦えるようになって、それからあの龍を簡単に倒せるようになるんですよね。楽しみです」

「香音がそう言う事を言うとは思わなかった。さっそくこの世界に染まり始めたね」

「確かにパソコン部に入ったのもウェブ小説を書くためですし数カ月前では考えられませんでした。なんかやる気が出てきたのでレベル上げに行きましょう!」

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