第15話:特訓週間①
横浜に向けて草原を歩いていくと電気のような音と誰かの大声が聞こえてきた。どうやら誰かが戦っているようだ。丘を一つ越えると、そのふもとで金髪の少年がバトルアックスを振り回しながら5体のゴブリンと呼ばれる人型の生物と戦っている。ゴブリンは皆、棍棒のようなものを持っている。
「あの人も強そうですね。確か江戸城に集められてた一人ですよね」
「そうだね。ブレイクだったはず。加勢は多分大丈夫だよね」
そう言いながらブレイクが戦う様子を眺める。バトルアックスを振り回し、自身を取り囲んでいるゴブリンを薙ぎ払う。それに加え、バトルアックスが当たったゴブリンは感電しているようにも見える。
「先輩、あれって【エンチャント】ですかね?なんか電気属性入ってませんか?」
「そうだね、確かサブ職業が魔導士だったはずだし、使っていてもおかしくはないね」
そう言っているうちにブレイクはゴブリンたちの制圧を終えた。ブレイクは周囲を確認するとこちらに気づいたらしく、武器を消して近づいてきた。
「えっ!?武器が消えたんですけど!?」
「何あれ知らない。新手のバグか何かか?」
俺たちが戸惑っている間にブレイクは目の前に着いた。
「よう、お前ら。昨日ぶりだな」
「ああそうだな、ってかさっき武器を消したのは何だ?」
俺が質問するとブレイクは笑いながら実演してくれる。
「ああこれだろ?武器を仕舞えるんだ。アイテムとかもバッグにしまえるからわざわざ手動でしまう必要がなくなるぜ」
そう言われて香音と俺は試してみる。道具を持って「しまう」と念じると収納された。
「おお、凄いなこれ。まあ俺は刀だから問題ないが」
「私は弓を背負わなくて済むので助かります」
「役に立ったらよかったな。そう言えばお前らも特訓か?」
「そうだな。とりあえず横浜まで行ってみることにした」
そう言うとブレイクは驚いたような顔をする。
「横浜はやべぇ。何がかって言うと空を龍が飛んでやがる。別に襲ってくるわけじゃねえし、俺らの攻撃も多分届かねえが、あれには当分敵わねえ」
「龍が?中華街があるから中国らしさを出すために居るのか?」
「さあな。それは分からねえが行くんだったら敵対させるようなことはやめた方がいいぜ。っと、敵が来たみてえだ。一緒に戦わねえか?」
ブレイクが指を指す方向を見ると近距離武器を持ったゴブリン10体ほどと遠距離武器を持ったゴブリンが2,3体居る。
「ゴブリンってあそこまで群れるものなのか?」
「ああ、たまに居るぜ。遠距離とか来られると職業的に厳しいが特訓になるんだよな」
と言いながらブレイクはバトルアックスを構える。
「【サンダーハンド】」
ブレイクが知らない魔法を唱える。そうすると、両手から電気が流れだし、持っているバトルアックスに電流が流れる。
「おぉ、【エンチャント】じゃなくてもそう言うのができるのか」
俺が感心しているとブレイクが得意げな顔をしながら解説してくれる。
「ああ、俺はドワーフ族選んだから体外まで魔力がコントロールできねえんだ。だから扱える範囲だけで工夫してんだ」
そう言いながら重そうなバトルアックスを担いで敵に突っ込んでいった。
「香音、遠距離のやつを頼む。俺はブレイクが相手してない残り半分をやってくる。【エンチャント・雷】」
そう言って走り出す。ゴブリンのもとへ走っていく途中、頭上を矢が通り、遠距離のゴブリンの頭に刺さる。流石は香音だ。
「GRAAAAAAAA!!!」
叫ぶゴブリンの首を的確に攻撃していく。ゴブリンも武器で応戦してくるが、レベルが上がっているので余裕を持って戦える。すべてを制圧したころには、ブレイクはすでに武器を仕舞ってこちらの様子を観察していた。
「お前すげえな。急所を的確に付いてやがる」
「人型だからなんとなく感覚でね。というか制圧早すぎるだろ」
「一撃で仕留められるからな。そして遠距離のやつをお前の相棒がやってくれたからな。お前らと一緒なら今後も楽しめそうだ。じゃあな、また会おうぜ」
ブレイクは話を切り上げて東京の方へ歩いて行った。
「さっきの人上から見てましたけど言ってた通り一撃でした。凄い攻撃力です」
香音が近づいてきて言った。
「そうだな。とりあえず今後も居てくれるんだったら心強そうだ」
「そうですね。じゃあ横浜行きましょうか」
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