第11話:魔法不発の原因

パニック状態で判断が遅れてしまい、社畜霊の攻撃を喰らう。派手に弾けた衝撃で飛ばされ、鉄骨の柱に背中を強くぶつける。背骨のあたりが痛む。さっきの攻撃はクリティカルヒットしたようで体力はほとんど残っていない。

「香音、回復を・・・頼む・・・」

香音は慌てて回復魔法を何度も掛ける。体力は全快したが香音の魔力はもう残っていない。今後の回復は不可能だ。深呼吸をして、木刀を握りなおすが、物理攻撃が効かないのを思い出し、木刀を投げ捨てる。緩かったせいか、指輪も外れて飛んで行った。もう何が何でも魔法を発動できる条件を探すしかない。手のひらを正面・・・社畜霊の方へ向ける。心を落ち着け、魔法を唱える。属性は光。ヘッドショットでダメージが上がるかは知らないが頭を狙う。

【ブライト】

魔法の名を口に出す。手のひらから光の弾が現れ、敵に向かい飛んでいく。

「魔法が出た!」

条件は体力が満タンなことか・・・?確かに今まで魔法を使った時はダメージを受けていなかった。でもそうだとしたらとんでもなく重大なバグだ。こいつを倒したら報告しよう。そんなことを考えながら光の最下級魔法を放つ。

体力が半分を切ったとき、社畜霊はさっきまでとは違い、複数の赤い火の玉を生成する。それらは素早く飛び回り、弾ける。

「だめだ、避け切れない」

諦めて最小限の被弾に抑える。体力は少ししか削れなかったが予想があっていれば魔法はもう打てなくなり、勝利不可能になる。恐る恐るもう一度魔法を唱える。

【ブライト】

同じように光の弾が出た。原因が分からないが撃てるならありがたい。心を無にして光魔法を撃ち続ける。ダメージは足りている。このまま押し切れる。

最後の一撃を叩き込むと社畜霊は薄くなり、そのまま消えた。

「はぁー。疲れた」

「ですね。とういか何で魔法撃てなかったんですかね」

香音が俺の木刀と指輪を拾って持ってきてくれる。それらを受け取って装備していくと、ふと思いついた。

【ブライト】

《魔力が足りません》

「なんですか!?まだ敵が?って魔法が出ていない?」

「これってやっぱり指輪のせいか?」

指輪を外してもう一度唱えると魔法が出た。

「まさかこんな奴が犯人だったとは思わなかった」

「はぁ・・・そうですね。とりあえず道具回収して帰りましょう」

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「ダンジョン割と儲かりましたね」

香音が換金アイテムの詰まった袋を持って言う。

「そうだね。レベルも上がったし今後も何とかできそう」

「でもああいうタイプのバグは心臓に悪いからやめてほしいです。心配しました」

「それはごめん。とりあえず指定された場所に行こうか」

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