第6話:東京駅地下ダンジョン①

モグラを倒してから10分ほど進んだ。周囲の様子に変わりはなくまだレンガの壁とタイル張りの床が続いている。ふと足を止めると、自分たち以外の足音が反響して聞こえてくるのに気が付いた。おそらく人数は2人。低く落ち着いた男声とどこか事務的な女声も聞き取れる。どうやらこちらに近づいてくるようだ。

「香音、静かに弓を構えて。正体は分からないから合図するまで打たないでね」

香音に静かに伝えると香音は黙って頷いた。声の主はもう少しで対面するだろう。こちらに気づいている様子はない。木刀を正面で構え、深呼吸をする。

「おや、プレイヤーか。これは珍しい。私たちは敵じゃない」

男が両手を挙げながら近づいてくる。実力は不明だが敵意を感じない。ベージュのハットに黒いロングコートを纏った中年の男性は杖を持ったローブの女性を連れている。共に尖った耳であるところからエルフ族であることがうかがえる。

「すいません。プレイヤーがいるとは思いませんでした」

香音と俺は武器をしまう。

「ふむ、確かにそうだな。しかしそのレベルで2人で行動して体力も魔力も有り余っているのか。上出来だ。ダンジョンを攻略したらここに来るといい。この《東京駅地下ダンジョン》は手ごわい。アイン、この二人にマップをあげよう」

「承知しました」

アインと呼ばれた女性は何かを操作するとメニューに【ダンジョンマップ】が追加されている。半分は埋まっているらしい。

「俺たちは先に転移で出る。この3層までのダンジョンを攻略して来るといい」

そう言って2人は視界から消えた。

「今の人たちは・・・?」

「さぁ?でもあの装備、俺達よりレベルは高いはず。まあさっきの人も言ってたし先に行こう」

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少し進むと通路の中央に宝箱が置いてあった。

「先輩!宝箱ですよ!宝箱!開けますよ!」

香音が素早く宝箱に近づいていく。

「待て!モンスターかもしれない!」

俺が声をあげたとき、宝箱は既に半分開いていた。

「え?普通に金貨が出てきましたよ?」

近づくと確かに2万ゴールド程入っている。

「まあそれならいいんだけど、これからは気を付けてね。ミミックっていうモンスターも居るから」

明らかに怪しげな宝箱なのに中身が入っている。これもバグの影響なのだろうか。まあいただけるものはいただいておこう。

「あ、晴斗先輩!指輪入ってました!」

香音が渡してきたのは銀色のシンプルな指輪だった。効果はメニューで見ることができた。

【銀の指輪★★★】

効果:魔力+20・魔法攻撃力+10

銀でできたシンプルな指輪


「魔法攻撃だから先輩に上げます。私にちょうどいいのがあったらくださいね」

俺は香音から受け取った指輪を装備した。装飾品もいずれ馬鹿にできないほど重要になっていくだろうし今の内から集めておこう。

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