第4話:レベル上げ

結局武器を買ってそのままレベル上げをすることになった。日本サーバー始まりの街・・・通称江戸の街を北へ向かって出発する。関東平野の上に広がった平原は遠くにいくつもの山脈が見え、それ以外は何もない。これより100キロメートルほど北へ行けば自然都市宇都宮(β版未実装)などがあり、東よりに少し行けば先端都市筑波(β版未実装)などがあるらしい。しかし、β版なので日本サーバーは江戸の街を中心に半径50キロメートルほどしか実装されていないらしい。

「家とか道路とかが整備された現実と比べるとほんとに自然が多いですね」

香音が歩きながらこちらに話しかけてくる。現実ではこの土地の上に数千万もの人間が住んでいると考えると驚きだ。

「確かにそうだね。まあ街中で魔物が出てきたら戦いにくいだろうしこっちの方がちょうどいいかもね」

歩くこと数分、多少木の生えたエリアに来た。木々の間から何やら生き物の姿が見えた。羽の生えた昆虫の姿をしているが、昆虫というにはあまりにもサイズが大きい。1メートルを超えるその巨体の腕には鎌が生えている。

「香音、気を付けてくれ。カマキリの魔物だ」

「えっカマキリですか?虫ですよね?殺しましょうさっさとやりましょう」

急に早口になると弓を構え、目にもとまらぬ速さで矢を放った。矢はカマキリの鎌に当たるが弾かれてしまう。それと同時にカマキリがこちらに気づいたようだ。

「えっ、弾かれましたよ!どうしよう!」

「とりあえず落ち着け、そしてちょっと考えさせてくれ」

香音は明らかに慌てているようだ。今のうちに思考を纏めよう。この感じからして部位ごとに硬さが変わるらしい。矢の先端は石製だから木刀では太刀打ちできない。

「香音、鎌以外の場所に攻撃してみてくれ。俺は魔法を試してみる!」

「了解です!」

魔法。現実ではあり得ない不思議な力。この世界では火・水・風・土・樹・氷・雷・光・闇の9属性。これらを組み合わせることでさらに多様な攻撃ができるらしい。とりあえず何か撃ってみよう。複雑なのはあとで練習すればいい。

「【ファイア】!どうだ、魔法は効くか?」

手のひらから放った最下級炎魔法はカマキリの腹に当たり小さく弾けた。はっきり言って地味な魔法だがカマキリには効いたらしく弱っているようだ。

「先輩凄い!もしかして魔法ですか!?」

「そうだよ。とは言っても最下級だからもっと強くなれるけど」

俺はもう一度【ファイア】を撃ってとどめを刺した。

「とりあえず倒したな。攻撃を喰らっていたら危なかったかもしれないな」

「レベルが1上がりましたね。もう少し狩りましょうか」

その後も狩りを続けたが、この辺りはカマキリとスライムがメインらしく他は見かけなかった。

「晴斗先輩。そろそろ戻らないと学校締められちゃいませんか?」

そう言われて時計を見ると19時少し前だ。

「帰ってまた明日にしようか?」

「先輩が良いなら夜もレベル上げしませんか?」

とりあえずログアウトした俺たちは帰路につき、数時間後にまた集まる約束をした。





-------------------------------------

用語解説コーナー

魔法

9属性ある不思議な攻撃方法。属性を混ぜる、武器に付与する、発動の形を変えるなどすることで様々な攻撃が可能だ。

ランクが分かれており、下から最下級・下級・中級・上級・最上級・禁術級となる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る