第3話:バグとの遭遇

スライムを倒すと何やら見覚えのある物を落とした。

「晴斗先輩、これって・・・」

香音が落ちたものを拾い上げながら言った。

「ああ、どう見てもパソコンに入ってるフォルダだよな。しかも圧縮フォルダ」

スライムが落としたのは『name=スライムゼリー』と書かれたフォルダだった。

「これは確かにテストプレイ必須だな。報告しておくか」

とりあえずメニューを開いてみると【バグの報告】というものがあった。

「でもこれってファイル展開したらどうなるんですかね?」

香音がファイルを力づくで開けようとしている。しかし、ファイルについたジッパーはびくともしないようだった。

「人力じゃダメみたいです。諦めて報告しましょうか」

「まあ報告すると報酬がもらえるからな。バイトにも丁度いい」

「でもうちの学校アルバイト禁止ですよね。これって大丈夫なんですか?」

「まあゲームで遊んでるだけだからセーフという事で。他の人には内緒にしておいてね」

そう言うと香音は頷いた。しかし、そうなると学校のパソコン室でやってるのはすこしまずい気がした。

「香音、明日から自宅でやろう。オンラインゲームだからそれでも問題ないはずだ」

「ま、まあそれでもいいですけど・・・」

なんか返事が弱い気がするんだが理由はよく分からなかった。

「あ、そう言えば報酬ってどのくらい貰えるんですか?ちょっと気になります」

香音が興味津々な様子で聞いてくる。

「あぁ、内容は言ってなかったね。バグ1個につきリアルでは5000円、ゲーム内では1000経験値と10000ゴールドらしいよ。正式リリースされた後もちょっと有利みたいだな」

「5000円ももらえるんですか!?やったー!」

香音が大きめにリアクションする。最初に教えてあげればよかったかもしれない。


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スライムを倒し、街に帰ってきた。2人別で10000ゴールドを貰い、更にレベルも10まで上がったため、装備を整えることにした。装備屋に入ると、ドワーフ族と思われる老爺が出てきた。

「いらっしゃい、初めての客だな。好きなもん見てくといい。欲しいものがあったら呼んでくれ」

それだけ伝えると奥の工房へ行ってしまった。

「すごい職人さんっぽかったですね!私は弓を見てきますね」

香音はそう言うと隣のエリアに向かって行った。

「さて、俺も選ぼうかね。一応日本みたいだから刀があったら使いたいな」

そうつぶやいてはみたものの置いてある刀は全て高レベル帯のものしかない。最低レベルでも30レベルは必要みたいだ。ざっと見た感じ鉄製品や宝石製品など、装備に使われている素材が高いグレードだと高価なようだ。

「店主さん、ここにレベル10でも使える刀ありませんか?」

試しに奥の工房にいた店主に聞いてみることにした。

「なんだ。刀を使いたいのか。とは言っても低純度の鉄製でもレベル30は必要だ。木刀なら無くもないが切れ味はないぞ」

「じゃあそれください。レベル上げしてまた来ます」

そう伝えると店主はしばらく悩んだのちに木刀を貸してくれると言った。おかげで刀分のお金が浮いた。レベルが上がった時にこのお金で良い物が買えそうだ。

店を出ると香音はすでに買い物を済ませていたようで竹製の日本式の弓を持っていた。

「ふっふっふ、これでなぜかスキル欄に入っていた【弓道lv.3】っていうスキルが適用されます!」

「なんだそれ、現実の技術にも左右されるのか・・・」

「そうですね!私一応初段は持ってるので!さっそく狩りに行きましょう!」

なんかこの世界に来てから香音が大人しいキャラから元気なキャラに方向転換しかけてる気がする。まあ気にしないが。




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用語解説コーナー

【弓道lv.3】

日本式の弓の扱いが上達し、会心率が10%上昇する効果がある。西洋式の弓の場合は効果が半減する。

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