第一章:ゲームの世界へ

第2話:初めてのMMORPG

目を覚ますと街中の通りにいた。辺りを見回してみると風景としては大正時代の東京が近いようだが、江戸城に現存していない天守閣がくっついて完全体になっていたり、遠くに空に浮く島が見えていたりするところから明らかに現実ではないようだ。β版だからか人通りは少なく、この通りは武器屋などが立ち並んでいるらしい。今気づいたが、腰に初期装備と思われる両刃の片手剣がぶら下がっている。

「あっ、晴斗先輩!もう来てたんですね」

ローブを纏い、弓を背負った香音がやってきた。

「見た感じ香音は弓兵と魔導士か?」

「違いますよ。白魔導士です」

くるくると回り、謎の決めポーズをとりながら香音が答える。

「あれ?香音ってそんなタイプだっけ?もうちょっと静かで大人しいイメージがあったんだけど」

ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

「あー・・・。そこ聞いちゃいます?恥ずかしいので答えません!!!」

何が恥ずかしいのか全く分からなかったがまあいいか。とりあえず戦闘をしてみたい。

「なあ香音。さっそくだけど冒険に出てみないか?ちょっと戦ってみたい」

「いいですね!とは言っても私こういうの初めてなんですよね。RPGゲームとかやったこと無くて・・・」

「まあ最初だからそんな強くないだろうし、慣れてけば大丈夫だよ」

とりあえず街の外に出てみることにした。


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街の門をくぐると、草原になっていた。街は壁に囲まれていて、その外には敵がいるというのはよくあるタイプだ。

《フィールドに出ましたね。試しに【メニューを開く】と念じてみてください》

女声のアナウンスが聞こえた。

「うわっ!?なに?びっくりした!」

香音が驚いたようだ。まあ無理はない気がする。

「多分チュートリアルだよ。聞いておくと後々楽だよ」

そう伝えると香音はうなずいて聞くのに集中し始めたので、俺も指示に従ってみよう。とりあえず【メニューを開く】。やってみると、マップ、時間、ステータスなどがまとまっていた。おっと、フレンド機能を見つけた。香音に送れるかな・・・?

「香音。プレイヤーネームどうした?」

「プレイヤーネームですか?canonですよ。でもそれを聞いてどうするんですか?」

香音が首を傾げる。

「フレンド機能を使ってみる」

登録を済ませると、マップ上に香音も表示された。これ便利だな。しかもここからパーティー組めるのか。というわけでパーティーも組んでおいた。


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「あ!晴斗先輩!敵です!」

香音が指さした先には青色の液体っぽいものが1体だけ居た。

「これは定番のスライムだな、って香音もそのくらいは知ってるか。とりあえず戦ってみようか」

《戦闘に入ります。このゲームではターン制はありません。通常攻撃と技を使い分けて戦いましょう》

「ターン制ないのか・・・斬新だな」

「とりあえず弓撃ってみますね」

香音が弓を引き絞り、離すと真っ直ぐ飛んでいき、スライムに命中した。スライムの頭上にあった緑のゲージがいくらか削れる。

「香音すごいな。弓使ったことあるの?」

「一応中学は弓道部部長でしたけど西洋式の弓は初めてです」

褒められたのがよほどうれしいのか、香音は満面の笑みを浮かべていた。

「じゃあ俺は急に技でも使ってみようかな」

俺は剣を抜き、深呼吸した。

「【円斬】!」

技名を口に出すと勝手にやってくれるらしく、丸いエフェクトと共に体が回転する。

スライムは頭の上のゲージがなくなり、煙のように消えた。

「ふう・・・勝ったね」

「案外どうにかなるもんですね」

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