第10話 親父……

 親父が入院して2週間が経った金曜日の夕方、お袋から携帯電話に連絡が入った。

 明日、一般病棟へ移ると言う。

 肺の状態も良くなり、麻酔を続ける必要が無くなったとの事だった。

 明日、俺も病院へ行くと伝えて通話を切った。


 翌日、妻の真美子を伴い、親父の待つ道央病院へ向かった。

 病室は外科病棟の4階だと聴いていた。

 院内に入ると、真っ直ぐエレベーターを目指す。

 丁度、1階に降りてきたかごがあり、待たずに乗れた。

 4階で降り、ナースステーションで病室を確認した。

「小野的平さんですねえ。413号室ですう」

 脱力系看護師から縁起の悪い病室番号を聞かされた。

 軽く礼を言い、ナースステーションの並びの通路を真っ直ぐ進んだ。突き当たりを左に折れた所に親父の病室があった。

 入口のネームプレートには親父の名前だけが記載されていた。

 ドアを開け、中に入ると、あの死んだように眠っていた親父がベッドの上で腰を起こして長座ちょうざすわりをしていた。

「親父! 大丈夫なのか?」

 思わず俺は挨拶もそこそこに訊いた。

「おう」と親父は右手を軽く挙げて応えた。

「どこも痛くないのか?」

 俺は親父のベッドの脇に立ち、続けて訊いた。

「ああ」と親父は静かに笑った。

「どうして入院したのか、分かってるか?」

 俺は一番気になっている事を訊いた。

 親父は自信ありげな顔ではっきりと答えた。

「脱腸だ」

 俺は再び、不安になった。

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滑り込みアウト!! ~親父、どうして入院したのか分かるか? ロックウェル・イワイ @waragei

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