第9話 算段

 実家に戻り、俺は健康保健協会で聴いた話をお袋に報告した。

「どうしたらいいかねえ。労災ならお父さんの会社にお願いしなきゃならないし……」

 お袋は憂鬱そうな顔をした。

「親父が事故を起こしたのは土曜日の深夜だろ?」

「そうだよ」

「正確には日曜日の1時近くだろ?」

「そうだね」

「だったら夜中とは言え、休みの日じゃないか」

「そうだけど」

「私用中の事故だと説明した方が自然だろ?」

「それでいいのかい?」

「親父に訊きたくてもいつ目覚めるかも分からないし、例え意識が戻ったとしても意識障害があるのだとしたら思い出せないかもしれないだろ?」

「そうだねえ……」

 お袋は健康保健協会の書類を眺めながら溜め息を吐いた。

「明日、悪いけど、必要なところを記載して、健康保健協会にその書類を出して来てくれないか?」

「分かったよ」

 お袋は不安の表情を浮かべたまま、ペン立てからボールペンを取り出し、書類に記入を始めた。

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