第7話 穿き違い

 午前4時を過ぎ、家族を始め見舞い客の疲労の色が濃くなっていた。

 親父の病状も今日明日で結論が出るものではないことも明らかだった。

 ICUの親父の状態を説明し、礼を述べて今日の所は皆に帰宅をお願いした。

 病院には、俺とお袋と二郎が残った。


「ちょっと横になっていい?」

 疲労と不安と極度のストレスのためか、お袋は待ち合い室のソファーに縮こまるように寝そべった。

「大丈夫か?」

 二郎が心配そうに訊いた。

「ううん。少し横になれば大丈夫」


 お袋の様子を伺い大丈夫そうなのを確認したところでホッとしたのか急激に便意を催した。

 腕時計を見ると午前5時を指していた。

 眠い目を擦りながら肛門を締め付け、内股のり足小走りで1階の男子トイレに入り、個室の便座の蓋を上げるや否や一気にズボンとパンツを下げて便座に座った。


「?」

「!」


 脱糞したが、腰の辺りに重量を感じた。

 便器を覗いたが、ウンコの姿がない!


 よく見るとまだパンツを穿いていた。

 おかしい!

 確実にさっき脱いだはずだ。

 恐る恐るズボンを覗くとパンツが収まっていた。


「?」


 2枚、穿いていたのか……


 お袋からの電話の後、寝惚けてクローゼットで着替えた時に、穿いてたパンツの上にタンスから出した綺麗なパンツをオンしたんだ。


 糞っ!


 ふんだり蹴ったりだ。


 始末が面倒臭え……


 


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