第4話 見舞い客

 ICUの待ち合い室で医者に呼ばれるのを待っていると妻の真美子と両親がやって来た。

「お父さんは?」

「まだ治療中だ」

「意識はあるの?」

「死んではいないようだ」

「良かった」

 真美子はホッとした顔を見せた。

「脱腸が発覚した」

「脱腸?」

 真美子は呆けた顔をした。

「子供の頃から脱腸だったらしい」

「そうなんだ……」

「事故の衝撃で鼠径部から腸が飛び出たそうだ」

 俺は何故だか笑いそうになった。

「大丈夫なの?」

「もう担当医が押し込んでくれている」

「そう……」

 真美子は舅の失態に言葉を失った。


 この後も親父の兄弟・姉妹が随時、見舞いに訪れた。その度に俺は親父の容態と脱腸の話を彼等に話続けた。


 一通り見舞い客の応対が終わった頃、担当医の大藪が再び現れ、親父の病状を説明すると告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る