第31話 燃える戦場
俺が攻撃を受けた事で、俺の配属された部隊が動き出す。
勇気くんに駒場さん、ミアキス公にゼイラス王子、ビッシュさんガロンさんマルセルさんマルゴーさん、ディッキン宰相は公国の守りの為にここにはいないが、セルルカ姫の姿まである。その他に各国の勇者や騎士戦士たちが120余名いる。
そんな精鋭たちのど真ん中に敵の親玉が現れたのだ。総攻撃を集中されても文句はあるまい。
剣が、槍が、銃が、アイテール解放の志士のリーダーに向けられる。がその攻撃がリーダーに届く事はなかった。一足早く、リーダーの装備している大鎧の無数の目玉から、熱光線が発射されたからだ。
熱光線はかなりの攻撃力を有しているらしく、一度の攻撃だけで部隊の2/3が、熱光線で焼けただれる地に倒れ伏す。立っている者も半分は負傷者だ。
「ガッハッハッハッ!! まだこんなに残るのか!! 流石は精鋭部隊だな!!」
恍惚と声を張り上げる解放の志士のリーダーは、近くで呻くマルゴーさんにトドメを刺そうと大剣を振り上げる。
「やらせるか!」
俺は素早くマルゴーさんと敵リーダーとの間に割り込むと、敵リーダーの大剣をビシャールで受け止めた。
「ほう? お前は元気だな?」
しのぎを削るビシャールと敵の大剣。向こうには余裕がある。先程大剣を受けた時にも感じていたが、やはり敵リーダーに『謙虚』の反射は効果が出ていないようだ。熱光線は無効化出来たが、この大剣は無効化出来そうにないな。
俺が敵リーダーの攻撃を受け流している間に、ゼイラス王子ら回復要員が負傷者の回復をする算段だったのだが、向こうもそう簡単に回復させてはくれない。
熱光線で焼ける山野の向こうから、戦士たちの悲鳴が聴こえる。どうやら山野に
中からは敵リーダーが、外からは敵部隊の攻撃。単純な作戦だが、それだけに自力がいる。こちらは頭数では相手の二倍の戦力なのだから。
「む?」
俺と剣を打ち合っていた敵リーダーが、何かを感じ取って、自身の後ろ目掛けて剣を横に一閃した。
それを剣に武器化した魔族で受け止める勇気くん。先程の熱光線の攻撃から復活したようだ。
勇気くんなら『謙虚』で熱光線を無効化出来てもおかしくないはずだが、それは出来ない。何故なら勇気くんは『謙虚』のスキルを喪失しているからだ。
それはそうだろう。今の勇気くんからは、出会った頃の謙虚さは鳴りを潜めているのだから。
それでも元々のポテンシャルの高さで、勇気くんはこれまで勇者として戦線に立ち続けてきたのだ。
魔族の剣で敵リーダーと切り結ぶ勇気くん。DEXの高さからだろう、一撃一撃が必殺の剣となって敵リーダーの急所を攻め立てる。
それを嫌がる敵リーダーが、熱光線で勇気くんを退けようとすれば、俺が間に割って入りそれを無効化する。
「ちっ」
舌打ちする敵リーダーに追撃する勇気くん。このまま二対一なら勝てる。と思ったがやはりそう上手くはいかない。ズンズンズンッ!! と三体の黒いドラゴンが空から降ってきたからだ。
「ナムゾン、加勢します!」
上空でドラゴン乗り回すマゾーレット。自身は安全な所に陣取り、召喚したドラゴンを使っての高みの見物か。良いご身分だな。
いい加減マゾーレットの存在にイライラしてきたが、高みの見物を決め込んでいてもここは戦場だ。一人だけ安全という事はなかった。
ダンッ! と言う銃声が戦場に響き、光弾がマゾーレットの頭を撃ち貫く。
何事か? と辺りを見回すと、アサルトライフル型の魔族を構える駒場さんの姿が確認出来た。流石駒場さん。仕事が的確である。
これでマゾーレットが召喚したドラゴンも消えてなくなるかと思ったが、召喚されたドラゴンは残るのか。やはり上手くいかない。
だがやっと回復要員の回復魔法が効果を発揮し始めたらしく、負傷者たちが戦線に復帰し始め、俺たちを取り囲むアイテール解放の志士たちを押し返し始めていた。
「ちっ、やってくれたな」
敵リーダーのナムゾンは不機嫌さを露にすると、自身の側にいた二体のドラゴンの尾を掴む。
何を始めるのか? と勇気とともに身構えると、鎧が黒いドラゴンを呑み込み始めたのだった。
ゴキュゴキュと音を立て、ドラゴンを呑み込んでいく鎧。それとともにナムゾンの身体がどんどん巨大化していき、その風貌も変容していく。
顔は鱗が生え、牙が生え、腰からドラゴンの尾が生え、背からはドラゴンの翼が生えてくる。ナムゾンは鎧と融合し、ドラゴンと融合し、巨大なドラゴン戦士と変容したのだ。
「こんなのってアリかよ……!?」
驚きでぽつりと呟く俺を、巨大なドラゴン戦士となったナムゾンの、尾の一撃がお見舞いされる。
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