第20話 カウントダウンが聴こえる

「ゲーム……!?」


 ミアキス姫の声が怒気を孕む。俺を睨まないで欲しい。俺が言った訳ではなく、魔族が言っていた事を伝えただけだ。


 西の森から帰還して翌日。『魔化』の影響で身体が不調な俺への配慮で、ミアキス姫が俺と駒場さんにがわれた部屋へやってきた。

 お見舞い半分で、メインは昨日の俺の行動の裏取りである。お手数お掛けして申し訳ありません。

 そこで俺が『魔化』で魔族が何としゃべっているのか分かった事が話に上がり、魔族がこの世界を侵略するのはゲームだと話していたのを口にした為、前述のようにミアキス姫の逆鱗に触れてしまったようだ。

 いや、この世界アイテールの誰に話しても激昂するだろう。ここにいたのがミアキス姫とその側近だけだった事は、俺にとって幸運だったのかも。


「本当にそう言っていたのかい?」


 とはマルゴーさん。手をきつく握りワナワナしている。まあ、聴いたのが俺だけでは信用出来ないのも仕方ない。それでも俺は首肯する。


「他には何か言っていなかった?」


 姫様に促され当時を思い出し潜考する。


「俺に攻撃されて、『痛い』という事に驚いていたので、恐らく皆さんの攻撃は、魔族にとって痛痒つうようさえ感じていないかも知れません」

「なに……!?」


 だから全員で親の仇みたいに睨まないで欲しい。


「もしかしたら『魔』属性のスキルじゃないと、真に魔族にダメージを与える事は出来ないかも知れません」


 ミアキス姫が綺麗な顔を歪めて歯軋りする。


 その後ミアキス姫に俺がどうやって『魔』属性を獲得したのか尋ねられたが、俺が死にかけた話になり、『魔』属性の獲得は難しいとの結論に至り、ミアキス姫御一行は、今回の一件を八勇者会議に掛ける、と俺たちの部屋を出ていった。



「揉めそうですね」


 ミアキス姫御一行が出ていってから、駒場さんに話を振った。


「揉めるだろうし、碌に結論も出ないだろうな」


 確かに。出来る手が俺の『魔化』だけになるとなあ。俺、使い潰されるのかなあ。


「加藤くん的には今後どうなると思う?」


 逆に質問されてしまったな。


「あの魔族を俺が倒したのは悪手だった、と今は思っています」

「ほう?」

「魔族はアイテールこの世界をゲームだと言っていました。俺に攻撃されて痛いとも」


 俺の言に静かに首肯してくれる駒場さん。


「もしそれが本当だったとして、駒場さん、期せずしてゲームで怪我人、いや、もしかして死人が出たなら、そのゲーム、どうなると思いますか?」


 俺と同じ考えに直ぐに思い至ったのだろう。駒場さんの顔から血の気が引いていくのが分かる。

 怪我人や死人が出たゲームがどうなるか。そんなの決まっている。廃棄処分である。

 このアイテールが本当に魔族によって創られたゲーム内の世界だとして、俺が魔族にもし怪我をさせていたり、死亡させていたりしたなら、このアイテールは廃棄が決定された事になる。

 俺はこの世界の滅亡の引き金を引いてしまったのかも知れない。


「この事、日本に連絡するぞ」


 と駒場さんが真剣な目をしてスマホを取り出す。


「!? いや、出来るならそうすれば良いですけど、ここ、異世界ですよ?」


 あんまりにも現状がぶっ飛び過ぎてて、駒場さんもテンパっているのかと思ったら、そうじゃなかった。


「加藤くんが寝ている間に調べたんだが、俺のJOBは『異界と情報を繋ぐ使者』らしい」


 ほう。と感心している間に、駒場さんは日本へ連絡を入れる。



「加藤くん、直ぐに帰って来なさい!」

「帰れません。転移魔法が使えないので」


 電話越しに五百蔵さんに倒置法で返してみる。帰れるなら俺も帰りたい。勇気くんに頼めば帰れるかも知れない。駒場さんだけならそれでも良いかも知れない。

 でも勇気くんは勇者で、俺はこの世界の滅亡の引き金を引いた人間で、きっとアイテールから逃げ出す事は許されないだろう。

 電話越しに向こうで五百蔵さんが煩悶しているのが分かる。


「すみません。わがまま言っている自覚はあります。でも、ここで逃げ出せる程器用な生き方を、俺は出来ないんです」

「……………………駒場くんに代わって」


 俺はスマホを駒場さんに返す。


「はい。そのつもりです。はい。また事態が動き出しましたら連絡します」


 それだけ言って駒場さんは電話を切った。


「駒場さん……」

「未成年二人残して、政府の人間だけ逃げ帰れる訳ないだろ」

「すみません」

「謝るな。諸々覚悟の上で同行に志願したんだ」


 心強い。同行者が駒場さんで良かった。ホッと一息した所で尋ねる。


「そう言えば駒場さんも最初からJOB持ちだったんですね」

「? 全員JOBはもっているものだと聞いたが」


 あははは。ですよねぇ。で駒場さんのステータスがこちら。



ステータス


NAME 駒場 武蔵


JOB 異界と情報を繋ぐ使者


LV 11


HP 1502


MP 899


STR 211


VIT 190


AGI 259


DEX 153


INT 127


スキル


弾薬生成LV8


鑑定魔法LV1


ユニークスキル


異界通信LV5



 え? 何か俺がLV10の時の10倍くらい強いんですけど? これが一般人とエリートとの違いってやつか。

 ちなみに俺はこんな感じ。



ステータス


NAME 加藤 高貴


JOB 風林火山


LV 52


HP 2751


MP 2202


STR 211


VIT 270


AGI 155


DEX 203


INT 249


スキル


謙虚LV58


鑑定魔法LV6


火魔法LV26


風魔法LV22


水魔法LV22


地魔法LV22


スキルキャンセルLV12


魔化LV3


ユニークスキル


風林火山LV30



 勇気くん今どれだけ強くなってるんだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る