第2話 消えた場所
目の前で起こった現象を受け入れられず頭を抱えていた。
「俺のコレクション達は何処へ…。必死で集めた緑グッズが…」
「悩むところそこなの⁉」
絵里香の驚愕と飽きれが混ざったコメントを聞いて我に返った。
「そうだ!家は?何処に消えた⁉」
「一番にそれを悩みなさいよ…」
家があったであろう敷地に足を踏み入れたがやはり何もなかった。
基礎があった痕跡も綺麗さっぱり無く、本当に綺麗に消されていた。
「と、とりあえず両親に連絡するのが先じゃない?」
「そうだ!母さんに連絡しなきゃ!」
スマホを取り出し母親に連絡をするが応答はない。
「駄目だ、どっちも出ない」
「どうすんのよ、帰るところ無いじゃない」
「なんでそんなに冷静なの?」
「冷静じゃないわよ!どうするのかってきいてんのよ!」
あっ…やっぱり取り乱してたわ。
「とりあえず警察に電話…かな?」
待てよ、仮に警察に電話したとしてどうやって説明する?
帰ってきたら家が消えてましたなんて信じてもらえるはずがない。
じゃあ何処に言えばいいのだろう?
だが、高校生ができることと言えばそれが限界だろう。
「遼…一旦ウチに来て落着いて対策を考えましょう。おじさん達にウチに居るって言えば安心でしょ?」
「そ、そうだな。」
絵里香が小さくガッツポーズをした様に見えたが何だったのだろう。
「っは!私ったらこんな時に喜ぶなんて不謹慎よ!」
なんかぶつぶつ言ってるし。
踵を返して絵里香邸へ向かおうとした視線の先に…
「…」
家があったであろう場所を虚ろな瞳で見つめる和洋服の少女が居た。
「君さっきの…」
話しかけようとすると彼女がこちらを振り向いた。
その視線に感情は無い、だけど確かな敵意の様な物を感じる。
「えーっと、どうかしたかな?」
「…」
返答は無い。
「ちょっと、なんであの子睨んでんの?」
「わからない、僕さっきも無視されたし」
「…さっきって何?私聞いてないんだけど」
「いや、そりゃ言わなくていいと思って」
「ふーん、そーですかー私に隠し事かー」
なんでそんな不機嫌なんだ?
「ちょっとあんた、私達に何か用なの?」
少女は一瞬だけ絵里香を見たが再び視線を戻す。
「ちょっと!無視しないでよ!」
絵里香が詰め寄ろうとしたその矢先、少女から白い霧の様な物が溢れ出た。
「これは…!離れて遼!」
「えっ?」
一瞬だった。
なんとか絵里香を抱き留める。
「どうしたんだよ!きゅ…救急車!」
「やっぱり…」
涼しい声で少女が呟く。
「やっぱりあなたの色はそれなのね」
「…どういうこと?一体絵里香に何をしたんだ?」
不安と怒りが交錯して言葉の意味が理解できなかった。
「そのうち分かるわ…あなたは選ぶことになるのだから」
「どういうことだよ!早く絵里香を元にもどせよ!」
少女は興味を失ったように踵を返し再び煙の中へ消えていった。
「うぅん…遼?」
「絵里香!よかった!気が付いたんだね!」
「…私倒れてたの?」
「うん、急に倒れたからびっくりしたよ」
意識がまだはっきりしないのか、きょろきょろと辺りを見回し再びお互いの目が合う。
瞬間的に絵里香の顔から火が噴いた。
「ちょ…ちょっと!何抱き付いてんのよ!変態!」
えー、助けたのに何故その言い草になる。
「人が意識を失っている間に変なことしてないでしょね!」
「しっ…してないよ!絵里香が心配でそれどころじゃなかったんだから!」
「…心配してくれたんだ…ありがとう」
「え?なんて?」
「もう!それよりさっきの女は⁉」
「それが急に消えちゃって…」
「追いかけなきゃ!」
じたばたしているけど力が入っていない。
「ひとまず絵里香の家に行って休もう」
お姫様抱っこで絵里香を抱き上げる。
「ちょっと!往来で何してんのよ!一人で歩けるから降ろして!」
「全然力が入っていないじゃないか。すぐそこなんだからおとなしくしてて。」
赤面しながらも諦めたのか抵抗は収まった。
「…早く行きましょう。でもゆっくり歩いてね、頭がふらふらするから…」
「はいはい、仰せのままに」
展開が急すぎるので、頭を整理する為に絵里香邸へ一時撤退しよう。
住宅街にひと際目立つ施設が見えてくる。
特定施設指定地区として大丈夫かと思う並びにあるのが結縁邸兼研究所である。
虹彩認証と指紋認証を経て生体スキャンとかなり厳重なセキュリティーを通り、ようやく家の中へ入る。
「この家は本当に厳重に守られてるよな。研究所だから仕方ないか。」
一体誰と戦っているのやら。
「…そろそろ降ろしてくれる?」
「そ…そうだな。ごめん…」
「別に謝らなくていいわよ」
お互い気まずい空気に黙り込む。
「あ~いらっしゃ~い遼太郎く~ん☆」
そこへ気が抜けた声が響く
「若葉さん、お邪魔します。」
「どうぞどうぞ☆ウチの子をお姫様抱っこでお持ち帰りしてくれる日が来るなんて、今夜は赤飯かしら☆」
バッチリ見られてた。
監視カメラか!そうなのか!
「ママ!そんなんじゃないから!」
「あら~そうなの?ママ早とちりしちゃったみたい☆」
この人は結縁若葉さん。
絵里香の母でいつも笑で掴みどころがない人である。見た目は20代にしか見えないが年齢は教えてくれない。(怖いから聞かないけど)
この研究所でおじさんと共に行政機関の研究を行っている様だ。
「若葉さん、今そこでちょっと絵里香が倒れて連れ帰って来たんです。」
絵里香の顔を見て若葉さんの表情に緊張が走った。
が、一瞬で笑顔を取り戻した。
「えりちゃんも貧血があるからね☆何か疲れる事でもした?」チラッ
意味深な目で僕を見るのを辞めて下さい。
「ママってば!まだ何もしてないから!」
「あらあら☆『まだ』ってことはこれからなのかしら☆」
「そういう意味じゃなくて!」
「遼太郎君、えりちゃんをちゃんとリードしてあげるのよ☆」
親指を立てて満面の笑顔で言われても、何をどうしろと…。
「そ…そんな事よりも遼の家が大変なの!」
「そうだった!若葉さん信じて貰えないでしょうが僕の家が無くなっちゃったんです!」
「おばさん達にも連絡したけど繋がらなくてひとまずウチに来たの」
若葉さんは思考をフル回転させていた。
そして出した結論は…。
「なるほど☆つまりそういう設定にして一緒に住みたいという事ね☆」
「「ちがーーーう!」」
green of green 盾乃いーじす @mcm555
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