始の章伍

※途中にある文字化けはバグではなく仕様です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


━突き刺した。


誰もがそう思ったであろう。


だが、刺さっていたのはクロの首ではなく体育館の床であった。


「...ほう、今のを避けるか。...」


声からでも分かるとおりホールは動揺を隠せなかったが、それも一瞬のことですぐに持ち直し、クロのそばへしゃがみ、クロへと話しかけた。


「うつ伏せの状態で回避とはな。力でも発現したか?」


クロはなぜかフルマラソンを走りきったかのように息切れを起こし、大量の汗をかいていた。


「わ...分かりません...でも...声が...したんです。」


「声だと?」


「はい。”横に転がれ”と、そう聞こえたと思ったら横に転がっていたんです。」


そう言った時にはすでに息も整っており、汗もひいていた。その光景を見た者ならばそれが異常であると感じたであろう。


当の本人を除いて。


「なるほど。どうやら力は発現していたらしい。これがお前の部屋の鍵だ。ここをでて左に歩いて行けば見つかる。」


とクロに鍵を渡し、扉に向かった。


扉の前でホールは止まると


「そういえばお前らの最初の人数はいくつだ?」


と意味のわからない質問をされ、沈黙が続いた。


「早く答えよ。」


「...は、はい。...えっと...確か3000人ぐらいだと思います。」


「3000人...か。」


クロの言葉を聞き少し考える仕草をしたが


「以外と少ないな...。そういえば貴様の名を聞いてなかったな。名をなんという?」


「譛ャ蜷坂恤クロです。」


「譛ャ蜷坂恤クロ...聞いたことのない名だな...まあいい、出る前にここの明かりを消してから部屋に戻れ。」


そう言うとホールは体育館から出ていった。


地球の人ならば、電気がないのに明るいこの体育館に違和感を覚えただろうがクロは疲れているため気づかずに電源スイッチを押してでていった。


━━ホールは暗い道を歩いていた。


「危機的状況が鍵になる力か...さらに言えばあの異常な回復力と謎の声。あの一瞬での回避力。それに...か...。なるほど面白い。」


ホールの顔は外灯がないため暗くて見えなかった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る