第14話
パレードの後、ボノボとチンパンジーはしばらくなりをひそめていたかのように見えた。ぼくは何度かチンパンジーに連絡を取ろうとしたが、無視された。この時期にボノボとチンパンジーがN県に移住していたことをぼくは後から知った。
チンパンジーから、最後の案山子を建てたから見に来てほしい、という旨の連絡を受けて、ぼくはかれらがN県にいることを知った。
チンパンジーに案内されて山道をのぼっていくと、一本の木が立っていた。木の周りにはタコの脚のようにうねる柵があり、鉄条網が張り巡らされていた。
「これ」とチンパンジーは言った。
これが最後の案山子なの?
「そうっす」とチンパンジーは答えた。
これはチンパンジー君の案山子? ボノボの案山子でもあるの?
チンパンジー「ボノボはこの木にしょんべんひっかけて東京に帰っちゃいました。こっち来てからしばらくは、もっとおもしろいことしよーよーって言ってたんですけど諦めたみたいですね」
ボノボはビルディングを続けるのかな?
チンパンジー「ボノボはビルダーじゃないっすよ。あいつには守るものがない」
チンパンジー君には守るものがあるの?
チンパンジー「正直、昔はなかった。でも今はこの木を守ろうって決めたんです」
ボノボは右足のすねに「Bonobo」という入れ墨をいれた。自分で彫ったと言っていた。
都市の案山子 阿部2 @abetwo
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