第18話 怪物の叫び声
僕とレナは三階に上がると、レナは苦笑いを浮かべた。
「改めて思ったけれど、この城って広いね」
僕も苦笑した。
確かにこの城は広い。人を探す時にはとっても不利である。
レナは四階の方に足を運びながら言った。
「それじゃあ私は四階を探すね」
僕は頷いて、右側から順に部屋レニティカを探し始めた。
どの部屋も埃まみれだった。だがレナの部屋に比べればマシな方だ。
埃を吸わないように、口を押さえながら部屋の中を探る。しかしどこにも人のような姿はなかった。
それが何度も続き、残る部屋は一つになった。左側の最奥の部屋である。
僕は二度ドアをノックした。
「レニティカ、いるか?」
中からは返事はなかった。ここでもうレニティカはいないことは確信しているが、念のためドアを開けた。
部屋の中は今までの部屋とは違ってきれいに掃除されていた。
誰かがこの部屋を使っているのだろう。
僕は口を押さえずに部屋の中に入った。
誰かが使っているのは確かだが、部屋の中には何もなかった。月光に照らされて部屋全体は少し明るかった。
僕は壁に背を預けて床に座った。
――ルーテリア一家が来てからそんなに時間が経っていたのか。
僕はため息をついた。
もう数日たったような気がする。
僕は疲れ切っていた。
――このまま寝てしまおうか。
僕は床に寝転がって暗い天井を見上げた。
レナの歩く音がうっすらと聞こえてくる。レナは丁度上にいるのだろう。
声を掛けようとしたが、気が失せて口を閉じた。
僕はゆっくりと目を閉じた。
私は四階全部の部屋を探し終えた後、廊下に腰を下ろした。
自然とため息が出てきた。
久々に結構頭を使ったような気がする。
いつもは難しいことなど何も考えずに、ただ遊びまくるだけなのだ。それが子供ってものでしょ?
レニティカさんの事はうっすらだが覚えていた。
一昨年前だっただろうか。
私が三歳の時、私はまだ勇者様の城にはいなかった。
勇者様の城に来たのは四歳になったばかりの頃である。
三歳の頃は一般の子供たちと同じく、無邪気に友達たちと遊んでいた。その頃からルナとは友達だった。町の人々からは二人まとめてルレナと呼ばれていた。私の住んでいた町はルーテリア一家の敷地に近かった。その時はまだレニティカさんと会った事はなかったけれど。
初めて会ったのは町全体が火事に巻き込まれた時。理由は不明だが、町全体が火に囲まれていた。人々はパニックになっていた。火事がだいぶ収まった後、偶然出会ったレニティカさんによって私とルナだけ保護された。ほかの人々は火事に巻き巻き込まれて死んでしまったらしい。それほど悲惨な火事だったのだ。
レニティカさんは私たちが勇者様の城に行ってしまう日まで遊んでくれた。
思い出しただけで切ない気持ちになる。
両親が亡くなり、ルナ以外の友達も亡くなり、町も今までの景色とは変わってしまった。
私は涙を流すまいと上を向いた。五階の階段が見えた。たしか五階には勇者様が唯一倒せなかった怪物が住み着いている。時々うっすらと怪物の声が聞こえてくるが、いままでそんなに気にしていなかった。
すると、怪物の声が四階全体に響き渡った。
私は勢いよく立ちあがった。今聞いた声は今まで聞いた声とは少し違っていた。何かを襲うような叫び声だった。
後を追う様に女性の悲鳴が聞こえてきた。
汗が吹き出し始めた。
間違いない。レニティカさんは五階にいる。
怪物の叫び声は何度も頭の中に響いてきた。
早く助けなければ。
私は五階へ向かおうと足を運んだが、途中で向きを変えて階下へと向かった。
すると、慌てた様子のお兄ちゃん(ロナ)と出会った。
私は狂ったような甲高い声で叫ぶ。
「お兄ちゃん、レニティカさんは多分五階にいる」
お兄ちゃんは小さく頷くと、五階に行った。
私は勇者様を呼びに一階に向かった。
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