第16話 殺した犯人
僕はゆっく売り振り向いて目を置きく開いた。
リデナさんは僕を怪しそうに見ていた。
彼女は僕がデラキさんの部屋に入ったことを知っているのだろうか。
僕は恐る恐る訊いた。
「何でしょうか?」
「惚けないで。デラキの部屋から出て来たでしょう?その時のあなたは嬉しそうだった。何かいいものがあったの?」
僕は大きく首を振って認めなかった。認めてしまえば終わりだ。
「嘘よ。デラキの部屋に何があったの」
このままでは部屋の中に当た日記の事を離さなければならなくなる。
僕は必死に思考を巡らせた。話を変えなければ。
「そ、そうだ。レニティカがどこに行ったか分かりますか?」
「話をそらさないで。デラキの部屋の中に何があったの」
「に、日記があったんです。その内容が面白かったので」
リデナさんはしばらく僕を見つめてからため息をついた。
「あなたは誰にも言うつもりはないようね。それならいいですけど」
僕は小首を傾げて、リデナさんが階段を下りていくのを見送った。
リデナさんが見えなくなると、僕は次の部屋のドアに手を掛けた。
だが、一度手を離して部屋の中の様子を伺った。無闇に人の部屋に入るわけにはいかない。
何度も声を掛けたが、返事はなかった。誰もいないようだ。
それを何度も続けていると、例の夫妻の隣の部屋から返事が返ってきた。ルナの声だった。
「レニティカちゃんはいるよ。入ってきていいよ」
部屋の中に入ると、レニティカが足を抱いてうずくまっていた。
その隣にはルナが慰めるように座っていた。
僕は愛想笑いを浮かべてレニティカに近づいた。
「犯人が分かったんだ」
レニティカは驚いたような表情で僕を見上げた。
「父さんを殺した犯人が?」
僕はどや顔を見せつけて口を開いた。だが、レニティカの悲しんでいた理由を思い出して口を閉じてうつむいてしまった。
犯人を言ってしまえばきっとレニティカは今よりももっと悲しむだろう。
僕は再び口を開いて、ファリアさんだけを言おうとした。だがまたすぐに口を閉じた。
勘だが、レニティカは僕が犯人を告げた瞬間にその本人に言ってしまうだろう。
だから僕は遠回しに言うことにした。
「君のかあさんと結婚したがっている人の中で有利な立場にいる人だと僕は思うんだ」
このいい方ならば大丈夫なはずだ。
まず結婚したがっている人と言ってしまえば二人に縛られる。そして有利な方と言えばファリアさんである。逞しい身体、イケメンな顔。誰でもあの二人のどっちを選ぶかと質問したら必ずファリアさんの方を選ぶだろう。
レニティカは目を輝かせてドアに手を掛けた。
「誰か分かった、きっとデラキだ!」
――なんでそうなるんだよ!
「待ってくれ!なぜそう思ったんだ?」
僕はレニティカを呼び止めた。
「だって、デラキはファリアさんよりも金もあるし敷地も多いし」
――ああ、こいつは見た目よりも金とかで結婚相手を決める奴か。
僕はため息をついて言った。
「それなら、犯人の正体を言おう。犯人はファリアさんとリデ……」
そこで僕は言葉を止めた。
ルナが考えるように言った。
「リデって誰?」
震えが止まらなかった。名前をほとんど言ってしまった。レニティアに勘付かれたら困る。
「リデ、リデ、リデ……」
「もしかして、リデナ姉さん?」
僕は何も言うことができず、レニティカと視線が合わないようにうつむいた。
レニティカは悲しそうな声で言った。
「やっぱり……」
レニティカはまた泣き出しそうになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます