第6話 暗黒の土地 ルーロス

あの出来事から一週間が過ぎた。この一週間は、城のあちこちを体験したり、ルナとレナの遊び相手をしていた。勘違いしないでほしいが、僕はあくまで遊び相手をしてあげているだけであって、自分が遊びた勝ったからではない。

勇者様も時々二人の遊び相手をしてくれてるが、ほとんどの日は外出している。恐らく魔王の討伐の準備をしているのだろう。

そういえば、ある日、勇者様と一緒に二人の遊び相手をしていると、勇者様からある事を言われた。

「俺が外出する時が多いから、君という遊び相手ができてルナもレナもうれしがっているよ。君が来る前までは、遊び相手になっていたらすぐに夜中になってルナとレナが眠る前に俺が先に寝ていたけれど、君が来てからはやっと俺が二人の寝顔を見れるようになったよ」

その言葉を思い出して顔をほころばせてしまった。

隣で僕を見ていたレナが、気持ち悪いものを見るかのような表情になった。

ムッと着て彼女を見返した。すると、レナはルナに何か話していた。話し終わると、僕を見てクスクス笑い始めた。

「何だよ」

レナはそっぽを向いた。

「ただお兄ちゃんが、一人で笑ってたからおかしく思っただけ」

「お兄ちゃんと呼ぶのやめろ!」

僕はレナを叩こうとしたが、すぐにルナの後ろに隠れてしまった。一週間暮らしてきて分かったのだが、レナはとても反射神経がいい。それとは逆に、ルナは反射神経が悪いのだが、物を投げる時の命中率がほぼ100%だ。本人に聞いたことなのだが、的を大きく逸れたのは、僕が城に来たときに投げた矢が初めてなのだそうだ。

振り返ってみると、ルナとレナの事を少しづつだが理解してきている。だが、勇者様の事は優しいということ以外理解できていない。やはり、外出が多くて話す時が少ないからなのだろう。

言い遅れたが、今僕らは馬車に乗って悪魔に連れ去られ、はるか東にある国『ルーロス』に向かっているところだ。

なぜかというと、一日前に遡る。

昨日、勇者様が返ってくる代わりに馬車がやって来た。馬車には二人の男性が乗っていて、僕らがやってくると急いでいるような口調で話した。

「実はルーロスが魔王の軍兵に襲われているんです。先に向かわれた勇者様から、自分だけじゃできないから貴方たちも来てほしいとの命令なので、一緒に来てください」

勇者様の命令ならばと、僕らは躊躇せずに馬車に乗り込んだのだが、この馬車は悪魔のものだった。そして、男の二人の招待は悪魔で、彼らは、僕らが馬車に乗り込んだとたんに、人がちょうど三人入る大きさの籠で被せられてしまったのだ。

最初の頃は籠を蹴ったりなどして抗っていたが、無駄だと気付くと、今のように三人で会話していた。

悪魔は、勇者様がルーロスに向かっているという情報を聞いて、利用してやろうと考えたのだろう。

思いにふけっていると、籠の外から激しく叩く音がした。

「ルーロスに着いたぞ。さっさと出て来い」

僕らは出来るところまで立ち上がり、籠の下に隙間ができると、そこから外に出た。そして目を大きく開いた。

今目の前に広がる光景を例えるとするならば、暗黒である。日の光が、空全体に広がる黒い雲のせいで地にまで届いておらず、唯一の光と言えば電灯だけだった。

地面には人の死骸が沢山転がっていた。

しかし、死骸には血にまみれていないし、一つも刺されたような跡はなかった。

勇者様が言っていたことなのだが、悪魔は血を好むらしい。だから僕は死骸に血がついてないことを不思議に思った。

すると背後にいた悪魔がどや顔をして話した。

「ここが、一番新しい俺たち悪魔の占領地さ」

ルナもレナも泣き出しそうだった。僕も泣き出しそうだ。

「ルーロスはもう悪魔の集団に占領されたのか?」

悪魔はにやりと笑った。

「全部ではないが、ほとんどは占領した。残っている町はラドロス、ルルロス、アロスだけだ」

二人の悪魔は、僕らの腕を縛り上げると、城まで連れて行った。

ルーロスの城は、一般的な家よりも一回り大きいだけで、勇者様の城程ではなかった。だが、この城のすごい所は牢屋の広さだ。地上で見た城とは思えないほど広い。

僕ら三人は、個別で牢屋に入れられた。僕は部屋の右の隅に入れられ、レナは僕の向かい側に入れられた。ルナはどこにいるのか分からない。

僕はため息をついて地面に寝込んだ。

地面は氷のように冷たくて、とても寝れたものじゃない。

レナと話そうと試みたが、時々管理人が通るので止めることにした。

隣の牢にいる女の人と話そうとしたが、先ほどから顔を抑えながらずっとクスクス笑っているため話しかけないことにした。

だが、女の人がなぜ笑っているのか気になるので、時々ちらっと見てしまう。

すると、女の人は、僕の方を見ながら、さっきまでの狂ったような笑いとは違った、かわいらしい笑みを浮かべた。

「やっと会えましたね。ロナさん?」

彼女は愛おしそうに僕を見ていた。

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