第7話

  数か月前、あなたは駅の階段から落ちたことがありましたね。正しく言うなら、後ろから押された拍子に数段尻もちをついて滑り落ちたということがあったはずです。私がそのことを詳しく知っている理由はその場にいたからです。そして変装してあなたを車内からずっと付け狙い、人ごみに紛れてあなたの背中を押したのは坂東です。私は少し離れた人ごみの隙間からその現場を見ていました。


 子を流産させるにはもっと強い衝撃が必要だったはずなのですが、坂東は気後れしてしまったのでしょう。中途半端な力加減であなたを捻挫させる程度の結果しか残してはくれませんでした。


 私に詰められ、あなたとの結婚に焦がれた坂東の末路をあなたはどう思いますか?


 その愛情の深さに涙するのでしょうか、それとも私と坂東の手法に恐怖するのでしょうか?


 一人の男をここまで夢中にしてしまうあなたも私と違うタイプの恐ろしく罪深い女性なのだと恐れ入りました。

 

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