第4話

 夫は私よりも他の女を選んだのだと、理屈ではわかっていても自分の中の女があなたを許せませんでした。


 人の家庭を壊し、家族を奪おうとするその横暴さ。子どもという存在を盾にして不貞を正当化しようとする浅ましさ。突然現れた真っ黒い存在に私の人生は大きく乱され、ぼんやりと見えていた温かい将来を潰されたのです。あなたにわかるでしょうか、この私の気持ちが。


 私はいろいろなものを奪われているというのにあなたは私を踏み台にして新しい命も夫も家も手に入れています。何も悪いことなどしていないのになんと理不尽なことでしょう。


 だから私は坂東に言いました。私と離婚したければお腹の子を流産させろと。


 あなたが私から大事なものを奪うなら、私もあなたが一番大事にしているものを奪ってやりたいと心の底から思ったのです。


 

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