それは、やっと出会えた

フィアに抱かれ、空を飛ぶ。

ここが一体何処なのかはもう分からない。

かなり遠くまで移動している事だけは分かる。

その間、二人に会話は無い・・・。

ただ、風の抵抗と、背中にフィアの温かさだけを感じていた・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「もうすぐ着きますよ。」


体感で五分位経っただろうか。

フィアにそう言われ、辺りを見回すも、森と所々に湖がある様にしか見えない・・・。

「人間」に見つからない様に、迷彩されているのだろうか・・・。

徐々に高度が低くなっていき、ようやく地へと足をつける事ができた。

降りて見ても、周りは木々に覆われた森だけだ。


「こっちです、誓さん。」


フィアが先を歩き、俺を案内する。

少し歩いていると、風も無いのに周りの木々がガサガサと音を立て始めた。


「・・・なっ!?」


音を立てた草むら、木の上、歩いて来た道後・・・・・・そこに何人もの「人外」が姿を現した。

俺は既に、「人外」の住む場所へと足を踏み入れていた・・・。

無数の「人外」の眼が、俺に集中している。

この数だ・・・逃げようなど考えれば、即座に捕まってしまうのは目に見えた・・・・・・勿論、そんな事、ここまで連れて来られてできるわけが無いが・・・。

ゴクリと唾を飲み込み、フィアに付いていく。

更に歩いて行くと、大きく立ちはだかる絶壁に同化しているトンネルが見えて来た。

そのままその中へと入って行く。

トンネル内はランタンに照らされて、真っ暗で何も見えないわけでは無かった。


「・・・フィア、これは「人外」が造ったのか・・・?」

「そうですよ。「人間」では何年も掛かるこの大きなトンネルも、私達なら一週間も掛からずに造れます。・・・・・・さぁ誓さん、着きましたよ。」


ランタンとは違う光が、トンネルの先から漏れている。

出口に近づくにつれて、その明るさを増し・・・・・・そして。


「・・・・・・ここが・・・」


トンネルを抜けて目にしたのは、多く建ち並ぶ家。

絶壁がドーム状になってこの場所を囲んでいる。

上を見上げれば大木が多い茂り、頭上を外からは見えない様になっていた。

そして、何処を向いても大勢の「人外」・・・。


「ようこそ誓さん。「人外」の都市へ。」


「人外」の都市。

そう言われても納得できる程に、ここは誰が見ても都市として「人外」で賑わっていた。


「それでは、早速会いに行きましょう。・・・「女王」に。」


突っ立っていた俺の体がビクリと反応した。

「女王」・・・。

そうだ、俺はその「女王」に聞きたい事が山ほどあるんだ・・・。

その為にここまで連れられて来たんだから・・・。


「あそこで待っています。」


フィアが指さす先には、ここからでも見える程に一際大きな建物があった。

そこに向かい歩き出すフィアに続く・・・。

周りの「人外」達の注目を一点に受けながら・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


建物は全体が白で塗りたくられており、「人間」の都市で言うところの高層ビルの様な見た目をしていた。

その中へ恐る恐ると足を踏み入れる・・・。

中に入ると武装した「人外」が何人も居て、フィアに敬礼していた。

もしかしたらフィアは「人外」の中でも結構、上位に位置する立場なんじゃないかと、そう思った。

そして、一緒に居たという事と、親しい接し方からして、ミーユやクシィもまた同等の・・・・・・。

そんな考えをしつつも先を歩いて行くフィアに連れられて、広場の様な場所へと出た。

目の前に長い階段があった。

そして、その階段の先・・・・・・頂上で誰か椅子に腰かけている・・・。

あれが「女王」だと、言われずとも確信できた・・・。

しかし、布の様な物でその姿が見えず、シルエットしか確認できない・・・。


「誓さんをお連れしました、「女王」。」


フィアが一礼して、そう伝えた。

やはり、そうだ・・・「女王」。


「・・・・・・ご苦労様、フィア。」


頂上から声がした。

優しく包み込むような声。

・・・シルエットが立ち上がった。

姿を隠していた布が左右に退かされる・・・・・・そして、ようやくその姿を現した・・・。


「・・・・・・なん、で・・・嘘・・・だろ・・・」


聞こうと思っていた事が全て吹き飛び、「女王」と呼ばれるその存在を目にした瞬間、「あの時」の記憶が脳を埋め尽くす・・・。

あの日、怪我をした俺を手当てしてくれた・・・。

笑って俺の話を聞いていた・・・。

またお喋りしようと、別れ際に約束した・・・。


「私は「人外」の「女王」、ルアーフ。」


・・・・・・彼女がそこに立っていた・・・。

あの時と同じ、嘘偽りの無い笑顔を俺に向けて・・・。

階段を下りて来る・・・。

その間も、俺から視線が外れる事は無い・・・。

・・・・・・そして、俺の目の前に立ち、


「やっと会えたね、誓。」


俺を力強く抱きしめた・・・・・・。

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