断章 頂に立つ者たち

 その空間が一体どこにあるのか、いかなる次元に存在しているのか、知るものはほとんどいないどこともしれない虚構の空間。

 暗闇の中にはうっすらと青い炎がともっており、大きな円卓を七つの豪奢な椅子がぐるりとその周囲に等間隔に並んでいるのが見て取れる。

 七つある椅子のうち、いくつかは空いていたが、それは実にいつも通りで些細なことだった。

「それで、次期セブンスの面子はそろそろ決まったのかね?」

 老齢の男性が誰へともなくそう尋ねる。

「今回で席を離れるのが【賢者】【灰燼の魔女】【剣聖】の三人。新たに三名の英傑が必要になる」

「まて、【凍結の天帝】を残すつもりか? やつは裏で怪しげなことをしていると聞く。そんなことをしている人間を我らが《セブンス》にとどまらせると? あなたはどうお考えですかな、【賢者】グリモール」

 話題を振られた齢七十ほどに見える男性――レイの祖父であり世界最強の魔術師グリモール・アスタルテはつまらなさそうにふうとため息をつく。

「お主らは何を話し合っておるのじゃ。《セブンス》はあくまで魔術組織の最高機関。であれば、その議席も平等に魔術師の中から選挙で選べばよかろう」

 初めて出る『選挙』という手法だったが、みないったん考え出す。

「確かに、他薦を続けても家格のあるものが入ってくるばかりで真の実力者は見いだせない」

「一理ありますな・・・・・・しかし――いいのですか? あなたの席はお孫さんが得られたものなのかもしれないのに」

 そんな同僚からの問いかけにグリモールはにかっと笑ってこう答えた。

「何を言っておる。実力でもレイがのし上がってくるに決まっておるわ」

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【賢者】の孫ですみません!? @mjou

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