Re:port 8/相良 未来は、愛したい

 奇跡的にもらえた七連休により、かろうじて新作を間に合わせてから、一年が過ぎた。



 あれから俺は、衝動と憧れ、仲間への感謝と罪悪感のままに書き上げた作品が空前絶後の大ヒットを飛ばし、コミカライズ、アニメ化、フィギュア化、ゲーム化と、すっかり売れっ子になっていた。



 ……わけも無く。

 あそこまで支えられておきながら、これまでで一番いちばん、PV数が伸びたという、ただそれだけの結果に終わった(しかも大方、同僚達による気の利いたかさ増しっつーサクラ的な物)。

 ま、進歩っちゃあ進歩ではあるんだが、大言壮語しといてこれってのが、俺らしいというか何というか。



 けれど仲間、そして自分の本心にオープンになったからか。

 それまで卯建うだつの上がらなかった俺も、なんの予定も無い、丸っきりフリーのオフには執筆に没頭するようになった。

 進化とまでは行かずとも、なぁなぁにしてた俺にしては、少なくとも変化ではあったと思いたい。



 その間にたとえ、店長がエリア·マネージャーとして店を発ち、新たに冴島が後釜になるという、俺なんて目じゃないレベルで分かり易い成長イベントが有ったとしても、だ。



「はぁ……」

 ……こいつ、本当ほんとうにとんでもないやつだ。

 いや、ま、確かに前の店長は、二言目には『次は冴島くん』と口にしてたよ。ええ、してましたとも。

 でもお前、ああだこうだと毎回、躱してたじゃん。話題変えたり、聞こえなかった振りしたり、謙遜したりしてさぁ。

 状況が状況とはいえ何、本当ホントに店長に登り詰めちゃってるんだよ。



 いやね? これまでの実績、徹底したビジネス·ライクり、どんな状況にも臨機応変に対応出来できるメンタルと柔軟さと冷静さ、常に周囲を気にかけてくれている人間性、みんなからの絶対ぜったい的な厚い信頼などなど、普段のチート無双っりから判断するに、お前しかなかったけどさ。

 ここまで来たらもう、足向けて寝られん。ライバル視とか、恐れ多いにもほどる。

 そんなこといまだにするとか、単なる可哀想な勘違い野郎じゃねぇか。



「どうしたんスか?

 よく分かんないスけど、元気出すっスよ、直希なおきさん!」

「犬原……お前は、そのままでいてくれ……。

 ずっと、俺の心の拠り所であり続けてくれ……」

「ん〜? よく分かんないっスけど、了解っス!!

 あとそれ、自分の人生でもっとも、断トツで言われた台詞セリフっス!!」

「だろーなー……」

 こいつ、俺なんかより余程よほど、オアシスしてるよ……。

 弱気の特効薬だよ、本当ホント……。



 そんな犬原も、今年で晴れて大学を卒業。

 したのに、何故なぜか残留してる。

『だってここ、居心地いごこちいんスもん! 自分にとって、別荘みたいなところなんで!』というのが、本人談。

 ま、気付きづけば犬原もめきめきとキャリア・アップし、今では正社員、うちの二番手になってたりするんだけど。

 勿論もちろん、本人のバイタリティ、人柄がらの良さもる。

 けど、そこまで行けた一番いちばんの理由は。



「……安心したよ。冴島とも順調そうだな」

 微笑みつつ、ワシャワシャと犬原の頭を撫でる。

 犬原は、擽ったそうにしたあと、ガッツポーズをしながら返す。

「当然っスよ!!

 今朝だって、互いに出勤日なのに全然、寝かせてくれな「それ以上は俺の心と出世に響くから止めろ」」

 


 そう。どんな馴れ初め、イチャイチャイベントを経たかはあずかり知らないが、俺がしばらく休んでいる間に、二人は付き合い始めていた。

 今では、『互いの将来のために』と冴島が言い出したので、職場の近くで同棲を始め、色んな面倒、出費を避けるべく、車も冴島だけが所有するようになった。

 と、ここまでは結構なのだが、なんせ犬原がこの通り無意識かつ全方位に明け透けなんで、二人の恋模様は赤裸々に事後報告、なんならリアタイで実況までされている始末。

 ゆえに、そんな恋人からの爆撃ミサイルにより店長が満面朱を注ぎながらツンデレるのは、俺以外のスタッフ間での風物詩となっている。

 ちなみに、二人の性別に関しては、想像にお任せする。ただし、断じて腐ってだけはいないと補足しておこう。



「お二人共。揃っていますね」

 おっと。渦中の冴島……じゃなくて店長が現れた。

 しっかしプライベート、ツッコむ時以外では『店長』って呼ぶの、まだ慣れねーなぁ。しっくり来ないってんでもないんだが……。



「はーい♪ きちんと来たよ、あきら♪」

 ……ま、それでも増しマシか。

 直そうとする姿勢を見せないばかりか、余計に砕けた犬原に比べたら。



「……仕事なのだから当然です。

 あと、犬原さん。何度も言っているように、業務中は『店長』あるいは『冴島さん』と呼んでください。

 他のスタッフに示しがつかないでしょう」

「あ! もしかして、今夜もリードするもり!?

 ずるいよぉ! 今日は、こっちのターンでしょぉ!?」

「でゅあむぁるぇぇぇぇぇ!!」

 ……当店でのイチャイチャ、及び照れ隠しのシャウトは、くれぐれもご遠慮願いたいところだ。主に、俺の精神衛生上。



「い、犬原。それくらいにしとけ。な?

 店長、困っちゃうから」

駄目ダメっスよ、直希なおきさん! ここは、はっきりさせておかないと!

 こういう日々の確認を怠ったばっかりに、後に縺れたりするんスから!」

「そーゆーのは、家でやってくれぇ! 頼むから、職場には持ち込まないでくれぇ!!

 気が気じゃねぇよ、こっちゃよぉ!」

「き、貴様るぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」

「どこのさえちゃ○だよ、あんた!! 俺達、そんなに赤点ヤバいのかよっ!!

 てか俺もかよ、一蓮托生かよぉっ!」

 あと、犬原! 「ふんす!!」じゃねんだよ!

 マジで勘弁してくれ!! 色々、控えてくれって、ガチで!!

 お前等に共倒れされちゃあ、店すらも倒れ兼ねないんだよぉ!!



「あ、あのぉ……」

 いつも通り騒がしいコントを繰り広げている俺達の前に、聞き覚えの無い女性の声が、ふと届いた。

 見ると、俺と同い年位くらいの、しっかりしてそうな女性。

 そして、彼女に瓜二つの、大人おとなしそうな女性が立っていた。

 双子だろうか。



 新たに人が増えた、尚かつ恥ずかしい場面を見られた所為せいで、気不味きまずい沈黙に覆われるバックヤード内。

 が、やがて冴島がわざとらしく咳をし、ふたりの横に立つ。



「夜勤務のお二人には、まだ紹介していませんでしたね。

 本日より、あなた方同様、夜メインで入って頂く運びとなりましたお二方です。

 犬原さん、君生きみじょうさん。早速ですが、自己紹介をお願いします」

「オッス! 犬原 晴留っス!! 店長の恋人っス!

 よろしくっス!」

「……君生きみじょう 直希なおきです。

 店長の恋人じゃありません。よろしく」

 またしても性懲りも無く店長に叱られている犬原を横目に、俺が可もなく不可もなくな挨拶を済ませた。

 にしても、犬原こいつあととか、どんな拷問だよ。ただでさえ、こういう畏まったの、得意じゃないってのによぉ。



「ありがとうございます。

 じゃあ次は、相良さがらさん達、お願いします」

「よっ! 待ってましたぁ!」

「すみません、ちょっとタイムで。

 晴留っ!! この、分からず屋ぁぁぁぁぁ!!」

 一向に改善の兆しが見受けられない犬原に、恋人からの教育的指導(物理)が入る。

 そのさまに、二人はドン引き……すると思いきや存外、落ち着いていた。

 ここに来るだけあって、ユニークなのには慣れているんだろうか。



「す、すみません。

 うちかく、騒がしくって……」

「いえ。

 賑やかでいと思います」

「仲悪いよりかは増しマシ

「……待って。いきなりは、ずるくない?

 そもそも、あなたがそれ言うとか、お姉ちゃん、感極まる……」

「空気読みなよ。

 あと、その節は大変、ご迷惑おかけしました」

「お、おう?」

 どうやら、こっちもこっちで訳有りらしい。

 ま、何となくは察するけど。そう軽々しく触れちゃ駄目ダメなんだろうな、ってのも含めて。



 それにしても……なんだ?

相良さがら』って名前を聞いてから際限無く溢れて来る、この感情は。

 なんでこうも、もどかしいような苦しいような、恥ずかしいよううれしいような、ゴチャ混ぜの気持ちになるんだ?

 なんて思っていると、二人が気を引き締め、こちらと向き合った。



相良さがら 未来みきです。

 紛らわしいので、気軽に『未来みき』って呼んでください。

 よろしくお願いします、君生きみじょうさん」

「同じく、相良さがら 羽来はく

 程々によろしく」

 姉が明るく、妹が小生意気に右手を差し出し来た。気後れ気味ながらも俺は順に、その手を掴む。



 瞬間ーー世界が、時間が、俺を構成するすべての事象が一旦、静止した。



 そして、未来みきさんとつないだ手から次々と、言葉が、風景が伝わって来て、眠っていた感情が沸き起こって来る。

 まるで、サイコメトリーにでも目覚めたかのように。



 そんな俺達を起点としたのか、痴話喧嘩中の店長と犬原、横で右手を伸ばし続けていた羽来はくさんが、何かに気付きづいた、思い出したふうに無言になり、見開いた瞳で俺達を凝視していた。



 さらに、外で働いていた他のスタッフ達まで、数人を除いて一気に押し寄せて来た。

 レジや対応に追われている数人も、業務に勤しむ手を止め、フリーズしながらドアの向こうで覗いていた。

 


 あまつさえ、今日は休みのはずのスタッフまで現れた。



 そんな、この店のすべての従業員の視線を一身に受けながら、固い割に軽い口を、ゆっくりと俺は開く。



「ミキ……か?」



 目を潤ませ、涙で満たし、余っていた左手を胸に当て、喜び一杯に、ミキは答えた。



「……はいっ」

 弾んだ、けれど冷静な声で告げると、ミキは右手を離し、俺に抱き着いて来た。

 俺は倒されそうになりながらもなんとか踏ん張り、支えてみせた。



「……ただいま」

 満点の笑顔で、ミキはすこぶる晴れやかに言う。

「ただいま、ナオくんっ」



「……ああ」

 もっと強く、けれど痛くならない程度にミキを抱き寄せ、俺も精一杯のうれしさと、なけなしの男気を表しながら、思いの丈を静かにぶつけた。

「……おかえり。ミキ……」





 そもそものブレストの起源の話となるが。ブレストとは本来、理想の恋人を作るべく、万物の母によって設けられたシステム……らしい。

 その万物の母(名前が不明なので、イヴと呼称しよう)は、原初の人間を生み出し、今もなお、命を司る女神……だとか。



 そんなイヴは、今もなお、人知れず人間を見守っていたのだが、昨今の少子高齢化の風潮に懸念、遺憾の意を表し、策を講じた……という。

 その策こそ、一人の人間の趣味や性格を完璧に把握した徹頭徹尾、理想通りの恋人を作ること……みたいだ。



「で、ボク達が元通りになったことで記憶を取り戻したミキは、その、本当の使命を果たそうとしたってわけ

 だから、父さんの元から一旦離れ、体と記憶を再構成し、他のブレスト達からの鬼特訓にも耐え、こうして外界げかいに戻って来た。

 っても、今居るのは趣味界ホビジョンだし、最終試験としてブレスト絡みの情報を根こそぎ奪われ、記憶操作された状態で人間として送られたけど」

「把握。

 ところでお前、キャラ安定しなさぎじゃない?」

「そりゃ、造り手が色々と安定してないし。

 まったく……こっちがどんだけ苦労して帰って来たと思ってるんだか。

 あと沢山、喋るようになったのは、ミキの無駄口を押し付けられたからだよ。

 昔はさておき、父さんの今のタイプは『お淑やかな子』でしょ?

 だから、二人の記憶を照らし合わせている時に、僕が引き受けたの。

 そもそも、あの時の父さんが求めてたのは、自分のすべてを正しく把握している友人ポジだしね。

 もう仲間も理性も確立したし、その役目は必要が無くなったんだし、別にいでしょ?

 だからこそ、こうして、父さんの関係者だけ、睡眠中限定で、父さんの趣味界ホビジョンに来て好き邦題やれるようになったんだから」

「仰る通り……。

 諸々……」

 未来みき羽来はくとの再会を祝し、歓迎会も兼ねて、睡眠中に、俺の精神世界ホビジョンでどんちゃん騒ぎする面々。

 そんな中、甲斐甲斐しくみんなの相手を未来みきが一人で務めている間に、俺は羽来はくに事情聴取をしていた。



 にしても、スケールでかぎ……。てか、自由過ぎ……。

 ご都合主義感、半端はんぱぇ……。

 っても、ブレストの時点で大概だったが……。



「ごめんなさい。

 色々、びっくりした……かな」

 子供っぽさと大人っぽさの中間みたいな口調で、今度は解放された未来みきが横に来た。

 ちなみに気を利かせてくれたのか、いつの間にやら羽来はくの姿は無くなっていた。



「そりゃ、まぁ……な。

 でも、いんだ。こうして、戻って来てくれたから」



「そう。その話なんだけど」

 膝の上に両手を乗せ、複雑そうな面持ちで、未来みきが言葉を紡ぐ。



「不思議なんだ。

 今まで私、ナオくんを子供、友達、家族に思ってたのに、今は少し、違うみたいなの。

 何ていうか、その……特別な意味で、好きになれそうな感じ。

 使命とかじゃなく、私は人間として、君を異性として、好きになれそうなんだ」

「そっか」

 中身を飲み干したグラスをテーブルに置き、俺は穏やかな心持ちで未来みきと向かい合う。



「それ聞いて安心したよ。

 確かに今までとは、色々と異なってるみたいだな。

 で? これから、どうするんだ?」

「うん。

 ずは友達、同僚から始めようかなって。

 ナオくんと一緒に仕事したいし、前まで通りカラオケしたいし、映画館やプラネタリウムとかにも行ってみたい。

 休日には一日中、朝から晩まで、ナオくんと一緒に、お家デートしてみたい」

 確かに大人おとなしくはなったが、まだ昔の未来みきらしさが見え隠れしていて、たまらず噎せてしまった。



「お前……それもう、友達のライン凌駕してっぞ?」

「そうかな?」

「そうだよ。

 俺のこと、大好きかよ」

勿論もちろん。大好き。

 でも、交際はともかく結婚は、まだ早いかな」

「けっ、けっこ……!?」

 どもる俺とは対象的に安らかに告げつつ、未来みき趣味界ホビジョンの中央、ライキング・ボードを見上げた。



「あれからナオくん、一度も私をライキング入りさせてくれてない。

 人間の体でも、ライキング対象になるのに。

 だから、将来が不安なの。『この人と、本当ほんとうにやって行けるのかな』って」

「……だから、自分おまえ一番いちばんに好きになってから、迎えに来いってか?」

「ナオくんて、本当ホントデリカシー無い。

 あーあ……なんで、こんな人のこと、好きになっちゃったのかな?

 プログラムとか使命とかすら関係無く」

「知っか。俺が聞きてぇわ。

 なんりにって、こんな俺に、お前みたいな、趣味も性格もベストマッチな、出来できた人間の異性が与えられたんだか」

「うーん……」

 小首を傾げ、人差し指を唇の下に当て、考える素振りを見せてから、未来みきな悪戯っぽく明かした。



「そうでもしないとナオくん一生、独り身だったからじゃないかな?

 他のブレスト達のご主人も、老若男女問わず、そういう印象が強い子達しかなかったし。

 ようは、地球に対する応急、救急処置だと思う」

「ねぇお前、本当ホントに俺のこと好きなのどうなの?」

「大好きだよ。だからこそ、包み隠さず言ってるんじゃない」

本当ントかよ……」

「拗ねてる。可愛い」

 俺の横に来て、俺の頬を軽く突いて来る未来みき

 悔しいが、悪い気はしない。



「ねぇ、ナオくん」

「……だよ」

 不機嫌さ全開に振り返ると、未来みきは神妙な顔色で、立ちながらボードを見据えていた。



「私は、いつだって、何度だって願ってみせる。

 どうか君が、絶えず幸せであって欲しいと。

 ……君が、すきになるまで」



 俺の方を振り返り、右手を差し出す未来みき

 その瞳は俺はなく、俺の本心を、未来を捉え、捕らえていた。



「だから、見せてよ。

 これまで誰かの希望になるためぐ走り続けていた君が、今度は自分の希望ゆめために、ひた向きに走る。

 そんな格好かっこい、愛しくて仕方の無い姿を。

 もう、本気にならない理由は無いじゃない。

 だって私は、君との約束通り、きちんと成長した上で、君の前に舞い戻って来たんだから」

「……」

 っ本当に……。何から何まで型破りだ。  どこまでも破天荒で、確かな確証も無いのに自信満々で、いつでも俺を強くしてくれる。

 ここまで期待された以上、応えないわけにはいかない、よな。



ったく。しゃあねぇなぁ」

 意図的に口調を荒っぽくさせ、俺は未来みきの、未来への切符、翼をつかみ、立ち上がった。



かならず成し遂げる。お前の望む、俺達の理想とする未来を。

 だから、それまでも、それからも、もう決して俺から離れんじゃねぇ。

 お前が俺の横に、後ろに、前にてくれる限り、俺はどこまでも進める。

 どこまでも、高く飛べる」

 俗に言う恋人繋ぎの状態で、俺は続ける。



「俺は必ず、一人前の男に、大人になってみせる。お前と釣り合えるように。

 お前の隣に立ってても恥ずかしくなんて微塵もように。

 だから、行こうぜ。最高速で、未来まで連れてってみせる。

 振り落とされんじゃねぇぞ」

 少し驚いた後、未来みきは大和撫子っぽく微笑み返して来た。



「意地でも食らいつく。

 そして、かならず出会ってみせる。私の憧れ恋い焦がれる、本当の、最高の私に。

 それまでは、キスもお預け」

「うげっ!?」

 マジか!! そこまで節制すんのかよ!!

 どんっだけいくつも費やすんだよっ!!

 かーっ、やってらんねぇ!!



「……いや、待てよ。

 それもそれでロマンチックだな。青春、清純ラブコメっぽい。一周回ってりだぞ。

 分かった、耐えよう」

だ。うちの未来の旦那、本当ホントチョロイン。

 可愛い」

 笑いつつ俺から離れ、俺の正面に立つと、未来みきぐ俺を見詰めた。



「きっと、出会ってね? 出会わせてね?

 それまで私……ずっと、待ってるから。

 あなたのそばで」

「ああ。任せろ。

 そう長くは待たせないよう、尽力する」

「はい。頼りにしてます」

 頭をポンポンと叩くと、満天の、満面の笑顔で、俺達の未来を未来みきは決定付けた。



「ナオくん……愛してる」

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