Re:port 3/相良 未来の、狙い
「デートォ!?」
「あの
「待って!?
あと、比率おかしい!
初っ端から色々ハード過ぎない!?」
「
一体、どこのじゃじゃ馬じゃ! 感心せんのじゃ!」
「はいはい、ボケたいのは分かったから静かにして、店長。
いうても
そろそろ、私達も子離れすべきだわ。
暖かく見守り、見送りましょう」
「あ、あの……これ、あれじゃないですか……?
ほら……ドラマとかでよくある、産業スパイって
相手の人、例の方ですよね……?
「そりゃ大変だ。
ところで
返却期限とか無いから、ゆっくりじっくり読んでくれて構わないよ」
「
って
「女子は実質、彼だけなので、ご心配には及びません。
私と犬原さんが、きっちり手綱……失礼。リードするだけで、迎撃には事足ります」
「それはそれでどうなの……?
あと、
「ごめーん、遅くなった。
ほい、お詫び兼差し入れ、旦那が作り過ぎて余った、たこ焼きと焼きそばとお好み焼きの、いつもの三点焼きセットー。
いやー、ここが持ち込み自由で、おばちゃん大助かりだわー。
で
「……」
親睦会も兼ねて月一で開催されるカラオケ会。
その席で俺は、いつも通り、集中砲火を食らっていた。
「……すんません。
ツッコミ
いや、今に始まった
てか今更だけど、『
どこのボラーちゃんく◯だよ。
「よろしい。
では、裁判だ」
「どこぞの少佐みたいな
店長からして、こうだもんなぁ。
そりゃ、
あと、
いや、そしたらそしたでショックだけども。
「
「ハニー・ラムネ・レモネード。モクテル」
「ここに来てから食べたのは?」
「テラ盛りフライド·ポテトのバター醤油、4種のチーズのコンボ。
あと、オレンジとレモンのフロマージュと、カスタードたっぷりアップル・パイと、プチ・シュー風ドーナツ」
「今のポーズは?」
「両手に顎乗せ」
「
「ひらめきのドラゴンボーイ。ラブコメ少女漫画」
「
「少女漫画。次いでTL」
「三点焼き食べる時の、いつもの感想」
「
「お、お買い物で優先するポイントは……?」
「第一に色、次に値段」
「ご趣味は?」
「特撮とラブラ◯ブ。
てか、冴島。関係無い上に分かり切った、お見合いみたいな質問すんな」
女子力云々、どこ行った。
てか、思い返してみれば確かに俺、女子力ヤベェ! 認めたかねぇが!!
「はいはーい!
そろそろ、
「いや、お前も自由だなぁ、犬原!
あと俺、まだ許してねぇかんな!?
お前が開始早々、『
てか、まだ誰も曲、入れてねぇよ!『そろそろ』って言うには若干、時期尚早だよ!」
「それじゃあ不肖、犬原!!
先陣、切らせて
「お前が歌うんかぁぁぁぁぁいっ!!
自分の作った流れ、ガン無視かぁぁぁぁぁいっ!!」
本っっっ
だからこそ、月一で飲み会なんか開けるし、強制参加でもないのに、
「やれやれ……」
苦笑いしつつ早速、ノリノリでアガり始めた犬原に合わせ、
偉大なる長老も、その方が夢を詰め込めると言ってたしな。
※
「
かーらーのー……ギュー♪」
「おわぁっ!?」
後日。デートを明日に控えたタイミングで、人里離れた隠れ家的な喫茶店にて、俺は
そして、出会い頭にハグを強要された。不可抗力だ。
「ナオくん、ナオくん、ナオくーんー♪」
すりすりと顔を擦らせ、かと思えば止まり、鼻を動かすターゲット。
「はぁぁぁぁぁ……ナオくんの
し……ふ……くぅ……♪」
これだけ見てると、ちょっと引くけど中々に可愛らしいリアクションだ。
俺が当事者でなく。
きちんとしたお付き合いをしており。
極め付けに、彼女が涎を垂らさんばかりに
という、
「ん、んっ」
強制イチャラブ展開に突入していた俺の後ろで、そんな
あ……もう一つ前提を入れるべきだった。
「……お二人共。
仲良くするのは結構ですが、そろそろ本題に入らせて頂いてもよろしいでしょうか。
とりま座れ」
……この場に激オコ状態の顔見知り(特に上司)が
も、含めるべきだった。
※
「
お願いですから、少しは言う事を聞いてください」
「ねーねー!
もしかして普段は、あんななのー?」
「だーまーれっ。聞ーけっ」
「わー、また出たー♪ 面白ーい♪
ずっとそうしてれば
その方が私も気楽だしー」
「……
自分の不始末は自分で何とかしてください。どうも私は、この方とも決定的に反りが合わないみたいなので……。
今回の提案、及び同席を願い出た手前、フォローはさせて頂きますが、進行役は譲ります……」
「お、おう……。
っても俺も、巻き込まれた側なんだが……」
「
中身はともかく、見てくれは整っている訳ですし。中身はともかく」
「ご
「
その証拠に」
着席後。
俺と冴島、二人と向かい合う位置に腰掛けた
「これは、明日に備えて私の自己紹介をする場なんでしょー?
だから、履歴書ー」
「いや、面接かよっ!」
普通、そんなん用意すっか?
別にお見合いや婚活でもないってのに……。
などと思っていたら、横から鼻を啜る音が聞こえて来た。
あー……居たわ。
「……
どうやら私は、あなたの
よもや……よもやあなたに、多少なりとも、こんな真っ当な準備を済ませられるだけの知性と理性と常識と気遣いが備わっていようとは……。完全に、誤算でした……。
これだけでも、この場を設けた収穫があります……。
私は、
「ふっふーん♪
言っとくけど、リアの差し金とかでもないかんねー♪ 私が、私の意思で考えたんだかんねー♪
……待って今、サラッとディスらなかった?」
「『ストレートに』、の間違いです……。
それより、
「お、おう」
「
「
早速だが、それを見せて
一応お
「……ふんだ。
「いや……そういう訳には……」
「
私、
カレカノっぽくもナオくんっぽくもないし」
……俺っぽいって、何……?
何を
そもそも、他人じゃねぇか……。
とは思いつつも。
これでは一向に進展しないので、
こいつに来て
「……分かった。
じゃあせめて、
「えー?
それ
「
「……むー。何さー。
そんなに私と一緒が
ま、そんなダメダメなナオくんも可愛くて嫌いじゃないけどー。
「……どっちだよ。
てか、ちょいちょい思ってたんだけどさ。
君は一体、どんだけ俺を好いてくれてんの? どうすれば俺を嫌いになってくれんの?
いや、
俺が話を脱線させると、彼女は顔を正面に戻し目をパチクリさせ。
数秒後に軽く笑った
「何、その質問ー。
無限で無制限、無敵で無期限に決まってるじゃーん。
今更、嫌いになんて
だって、私は……ミキは。君に、君を好きでいて
ただそれだけの
それに、万が一にも私まで君を嫌いになったら、君が君に愛想尽かしちゃうじゃん」
「まーた、そーゆー、厨二的なホラー発言を……」
「
本気だし、それ以上、以前に
あーあ、なんか
「分かった、分かった、俺が、俺だけが全面的に悪かった。
で? 俺は、
ゴミ箱を探し終え投げるフォームに入っていた右手を何とか戻し、俺が懇願する。
「……『
……これで満足?」
「お、おう。分かった。
その……。
……
名字被り以外の理由で異性を名前呼びするなんて、高校生の時以来なもんだから、中々に抵抗、ラグがあったが、どうにかクリアした。
その証拠に、
何はともあれ、これで難は逃れたか。履歴書も見せて
「うぅ……。
単体ならともなく、カプなら推せる……。
あー……今なら天下統一出来るわぁ……」
「……
ハテナバグスタ◯でも倒してやがれ」
……ねぇお前、
てんで当てになりやがらねぇ、このカプ厨限オタ。
それはそうとして。
閑話休題し、履歴書を拝見した結果。
『名前:
『スリーサイズ:ヒ・ミ・ツ♪』
『体重:林檎5個分♪』
『将来の夢:ナオくんが幸せになる
『性格:ナオくんに一途♪』
『誕生日:ナオくん♪』
『趣味:ナオくん♪』
『好きな物:ナオくん♪』
『特技:ナオくん♪』
『好きな人:ナオくん♪』
『好きなタイプ:ナオくん♪』
『好きな芸能人:ナオく(以下無限ループなので割愛)』
「「……」」
……うん。もうツッコむ気力も湧かねぇ。
つか、捌き切れねぇ。
履歴書から分かった
この
これは冴島ですら
いや、もー
「……ナニコルェ……」
「えー? どっからどう見ても履歴書じゃーん。
てか、ちょっと恥ずかしいから、あんまり見詰めないでよー♪
あ、でもでも、私の
きゃー♪
君が悪いんだぞ、ナオくん♪ めっ♪」
「あ……あはは……。
あははは……はぁ……」
……弱った。マジで弱ったぞ。
まさか、ここまで話が通じない、進まないとは……。
「……ん?」
消沈の
目をやると、冴島は神妙な面立ちをしており、ただ事じゃなさそうな雰囲気に当てられ、俺も真顔になる。
「あー、
本命」
「『本命』?」
「そっ」
またしても軽く身を乗り出し、
見てみると、冴島の視線の先も同じ箇所だった。
答えを求め、俺も該当箇所に視線を運び。
……今までと違う意味で、息を呑んだ。
『志望理由
私には、もう時間が無いから』
「
「見ての通りだよ。
私には、もう残された時間が少ないの。
いつになるかは分からないけれど、私はいつか、君の前から
「運命? また厨二かよ」。
そんな
なのに、
目の前にいる少女が、
姿や服装は一切、変わっていないのに。
「だから、それまでの間、私と付き合って欲しい。
君がもう一度、君を好きになる
君が、
「
「そう。
この一時だけ、俺にはそのグラスが、俺自身の心に思えてならなかった。
彼女に、内側から掻き乱されてならなかった。
「説明は出来ないけど……私は、君の
君に関する、君が知らない、覚えてない部分も含めて、
君が今、何を求め、何を望んでいるかも、よく知ってる。ともすれば君以上にね。
っても、君は隠しときたいみたいだから、この場では伏せとくけどね」
いや……搔き乱す、なんて生易しいもんじゃない。
鷲掴みにされた上で串刺し、丸焼きにされた気分だ。
それ
でも、
彼女の
そして……彼女の目に、態度に、言葉の節々に、脅されてる気がしたから。
『逃げるな』って。
『いつまでそうしてる
などと警戒していると、不意に彼女はシリアスなムードを解き。
普段とさして違わない、フレンドリーな色を見せた。
「あ。でも、誤解しないでね?
別に、弱みを握ったとか、これをネタに揺すろうとか、そんな
私はただ、君に分かって欲しいだけ。
私ならきっと、君にとって最大、最良、最強、最寄りの理解者になれるよって」
いつもの調子、会話に戻って安心したのかもしれない。
「
コンビニや駅じゃあるまいし……」
「むー。
こーゆーのは、フィーリングが大事なのー。
私は、いつもいつでも、誰よりも君の
「ご、ごめっ……。ちょっと、黙っててくれっか……。
あんたの声聞くだけで、腹筋に来る……」
「どんだけツボってるのさー!?」
さしものナオくん至上主義者も我慢の限界らしく、テーブルの下から俺の両足を軽く、可愛く蹴って来る。
正直、少しホッとした。
何も、ピンからキリまで俺のイエスマン、という訳でもない
「
そんな和やかなムードを、冴島が引き締めた。
「……ん。何?」
奇異にも
いつもなら、『まだ敬語ー』とか『名前呼びー』とか言いそうなのに。どうやら、丸っきり空気が読めないってんでもない
彼女の準備が整ったのを察し、冴島は単刀直入に質問する。
「『時間が無い』とは、どういう意味ですか?
どこかに引っ越すという
「……っ!!
冴島っ!!」
それに対して
視線で俺に「座って。落ち着いて」と命じて来た。
「……
カッとなった」
「ううん。
私の
そういう、誰に対しても親身になってくれる
「……んなんじゃねぇ。
こん
それ抜きにしても、触れて欲しくない部分なんて、誰にでも有るだろ」
「お? 自覚が芽生えて来た?
その調子、その調子」
茶化した
「……どちらでもある。
てか、説明が難しい。
多分、言っても到底、信じて
また濁すのか……と面白くない気分にさせられる前に。
「でも」と、
「でも、二つだけ。
二つだけ、どうか信じて欲しい。
私はナオくんの味方で、ナオくんを大切に想う気持ちに嘘偽りは一つも無いって
そして、私の
これだけは絶対だって、間違い無いって。どうか、忘れないでいて。
お願い」
そう結び、
想定外のアクションに、俺と冴島は顔を見合わせ、
「……分かった」
目線が近くなっても尚、不安そうな顔色の
正直、この場で彼女との縁を切るってのも有りだと思っていたが……異性、それも自分を好いてくれてる相手にここまで言われて
……
普段はオープンだし、ちょっとミステリアスな
それに、明日は何も、俺と
いつもはともかく、いざって時には頼りになる心強い仲間が二人も居るんだ。
変な
だから……。
俺は自分に言い聞かせ、奮い立たせ、拳を強く握り、今度はこっちから立ち上がり、会釈する。
「……
「は、はいっ!」
「俺を、男にしてくれっ!
俺と明日……デートしてくれっ!!」
数秒、無言に包まれる店内。
待てど暮らせど返答が無いので、目線だけ上げて彼女の
「……うん。
ありがとう……ナオくん」
そんな、
「あ。やっぱり3つ目のお願い。
明日、二人っきりになれない?」
「無理。
色々ってーか
あと、◯龍かよ」
「
「ちぇっ。ケチー」
……懲りねぇというか、油断も隙も有ったもんじゃねぇというか。
あーあ……俺、ひょっとして選択肢、ミスったんかなぁ。
※
二人と別れた後。俺は一人で、スマホをポチポチやりつつ紅茶を呑んでいた。
別に、一人で黄昏れていた
……正確には、その男が店を締め、晩飯を携えて俺の前に現れるのを。
「お」
などと思っている内に目の前に、トマトとチーズの香りが何とも
俺は有り付く前に、正面の位置に座した男を見た。
着物にインバネス、
このご時世にそんなシックな格好をしていれば、
この店が大正ロマンを売りにしておらず、
「よ、店長。
悪かったな、いきなり騒がしくしちまってよ」
「……それは何か? 立ち行かなくなる寸前の隠れ家という事実に対する皮肉か?
言ってくれる」
「
貸し切りにしてくれて助かった。
あの二人、ぎゃあぎゃあ
「代金」
……相変わらず、話の進行が早い
自分でボケといて無かった
それでいて、
まぁ、食い気味ではないだけ
などと落ち込んでいると、店長が席を外そうとしたので、俺は
店長は、自前のクロスで軽く拭いてから、それを操作し始める。
……しっかし、
あと、タイムスリップした感、
「……」
静寂に包まれる店内。
当然である。この喫茶店は人里離れた山の中に立つ、専ら常連客(っても、
店長が
そして、平らげ、厨房で洗い物まで済ませてもまだ店長はスマホに齧り付き、時折ノートに何かをメモしているので、いつも通り面白そうな本を物色し始めた。
そろそろ、補足を始めるとしよう。
これでも俺は、元来の本好きが高じ、子供の頃から小説家を志していた。
そして最近、ネットの世界で
そんな中、俺はある日、ニ連休を控えているのを
店長曰く『店の近くで拾った』との
何を拗らせたのか、アイデアなりストーリーなり設定なり文章なりに煮詰まった俺は、無意識の
いや、それどこの天才ゲームクリエイターことゴマ○だよ(
で、救われた上に食事まで無料で提供された俺は、一宿一飯の借りに免じる
この店に並べられた無数の本棚と、店長の服装からして、あっちは
一通り俺の説明を受けた店長は、無表情のまま
『その小説を最初に読み、批評する権利。それが今、そしてこれからお前が俺に払うお代だ』と。
断っておくが、店長の批評は実に的確かつ、その衣装からは連想出来ない
不可解かつネックなのは、こんなぽっと出の無名のアマチュアなんぞが書いた三文小説が、それだけの価値に見合っているのかという事実だけである。
しかし、迷っている
そんな
ここまで言えば、「何と羨ましい!」とやっかまれるかもしれない。
ところがどっこい、そこまで上手い話が転がっている道理は無い。
というのもこの店長、自分の好き嫌いはてんで明かそうとせず、それでいて書いた物に対する印象を、次に訪れた時に、料理でしか示さないのだ。
事実、前に試しに、今の流行に沿っているだけの、大して中身も面白みオリジナリティも無い物を出した時には、最後まで読了したタイミングで有無を言わさずに追い出され、次に書き上げたのを持って来たら魚肉ソーセージ一本しか出されなかった(しかも袋に入ったままで)。
つまり前回の、お世辞にも小説とすら呼称不可な紛い物に対する敬意、及び今回に対する現時点での期待値は、その程度でしか無かったという
そんなこんなで、この関係は決していい事ずくめ、美味しいだけではなく、中々にリスキーな物なのである(いや、物書きの端くれとはいえ、そんな物を試験的に出した俺に全面的に責任が有るのだが)。
おまけに、『なぜこんなボランティアをしてくれるのか?』は
分かっているのは、ここの店長かつ唯一のスタッフであり、大の読書好きであり、男性である
そして、そんな店長に当てられると自信を喪失するからか、彼を前にすると
よくもまぁ、こんなミステリアスな関係を維持しているなぁと我ながら思うが、それも一重に店長の
「趣味に走り過ぎだ。
お前はコメディ、ヒロイックな展開を持ち味としているが、それをおざなりに優先する
「おっと」
そうこうしてる間に始まった。急いで戻らんと。
俺は(
その間、待っていてくれた店長は、
「読者や需要を常に意識しろ、自分の価値観や自我や嗜好を一方的に押し付けるなとまでは言わん。
だが、ここはあらすじで連想される通りの、当初のシリアス路線のまま締めるべきだ。
そうでないと、目的も話も展開も、前作と酷似した物となってしまう。
例えるなら
悪いが、ネタでしかない。いや、ともすればネタにもならん。
ここまで不一致だと、悪い意味ですら印象に残らない」
「そこまでではないが、実は自分でも似た
でもよぉ。それだと、何か地味じゃね?」
「間も挟まずに二番煎じすら
どうしても今回の
時間はかかるだろうが、お前にはシリアスという武器も備わっており、それでも充分に猛者共と渡り合える。これが分かっただけでも、意義は有った。
違うか?」
「ぐぅ……」
ホンッッッッット……フォローが下手なんだか上手いんだか、よー分からん人だ。
でも、ま、悪い人ではない
その証拠に、今日はミート・ソースのみならず、フライド・ポテトとチキン・ナゲットも有った。
これまで何回かに分けて紡いで来た方向性、そして今回にかける思いは、決して誤ってはいなかった何よりの証拠だ。
だったらまぁ……全力で、全身全霊で答えるしかあるまい。
こんな、右も左も分からない、ズブの素人とどっこいどっこいの作家の大切な、唯一のファンなのだから。
「ごっそさん。そろそろ帰るよ。
ここまで言われた以上、今度はそれを作って来なきゃならんし」
「期待している」
俺が立ち上がり虚勢を張ると、店長は目を閉じクールに返す。
多分これで会話終わったよなぁ、と判断した俺が店長に背中を向けたタイミングで「待て」と呼び止められ、振り返る。
「あの女には、
「……」
文字通り、言葉を失った。それ
初めてだったのだ。店長が、小説以外の
今まで、名前や年齢程度しか聞かれて来なかった。プライベートに関するアドバイスなんて、一度たりとも受けなかった。
それに気を良くした俺は、すっかり得意気になり、鼻を掻き、背中を向けつつ目線だけ向けながら返す。
「ご忠告、痛み入るよ。ところでさ」
「
「いやね?
店長が今まで
ほら? 次に来た時には、ピザとデザートまで提供してくれた
覚えてるか?」
「……それが?」
「あれさ。
心当たり、有る?」
「出て行け」
図星だったらしく、無愛想な照れ屋がやにわに背後まで迫り、俺を強制的に締め出し、バタンッ!!と、壊れそうな勢いでドアを締めた。
「お可愛いこと」
こういう、分かり
さて、今日は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます