6話 メイ(ド)探偵!?

 サミヤは私の話を一通り聞いたあと、うんうんと頷いた。

 それから、手を挙げて私を見てくる。


「サミヤさん、質問ですか?」


「アルベルン侯爵の事をリュリス様はどのように思っているんですか?」


 どのように思っているのか、自分にも分からないと正直に伝えればいいのに私は強がって


「暴かなければいけない人、たったそれだけよ」


 と言ってしまう。

 でも、そこはサミヤ。しっかりと私の本当の気持ちを把握したようだ。


「確かに、分からない事が多い人相手では何もできませんからね」


 もはやメイドよりももっと人の心を読んで働ける仕事の方が良いのではないかとすら思う。

 肝心の彼女は「十年一緒にいたからですよ……」とか言いそうではあるが……。


「……リュリス様だって私の考え読めてるじゃないですか」


「とにかく、気心が知れない人と何か進展しても私は気に入らないのよ」


「とりあえずじゃあ朝食をとられてはいかがですか?何も進展しないのですけど」


「それは良い考えね。昨日の夜も何も食べてないし」


 そう思うと急にお腹がすいてきた。

 私はさっさとダイニングルームへ行くと、朝食を食べることにした。


-----


 このクランセル公爵のお屋敷には駐在のお手伝いさんが五人ほどいる。

 公爵、婦人の執事それぞれ一人づつ、ハウスキーパーメイド長、コック、そして公爵の一人娘、リュリス様の従者であるメイドである私だ。

 それ以外にもローテーションで数人のメイドがこのお屋敷で働いていたが、基本的に私と仲が良かった。

 メイドたちは基本的にゴシップを話すことが好きだったので、すでに先日のリュリス様の婚約破棄の話もばっちり把握していたのである。


「カレン、アルベルン侯爵の事なんだけどさー」


「この前見た時は凄い痩せてたよね!まるで人が変わっちゃったみたいに!」


 と、この通りである。

 そんなメイドたちのゴシップトークをさらさらと聞き流していたのだが、私の耳はとある情報をキャッチした。


「今度のフェーリーン姫のお誕生日会にはアルベルン侯爵が出席するそうよ?」


 去年は用事があるといってアルベルン侯爵は欠席していた。

 というか、あの侯爵は事あるごとに式典に欠席を繰り返してきたのであまり驚くことでもないが。

 そのフェーリーン姫のお誕生日会にはリュリス様も出席する予定である。

 確かちょうど2週間後だったはずである。


 これはリュリス様に伝えておいた方が良いだろう。

 あんな後悔に満ちたリュリス様を見るのはまっぴらごめんだったから。

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婚約破棄しようとした屑侯爵がやたらとイケメンなのですが。 夏樹 @natuki_72

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