第2話 柴田君
僕の友達に、人見知りで恥ずかしがり屋のオタクの柴田君がいる。
僕は柴田君と小学校から中学校まで9年間同じ学校で、家が近かったこともあって、一緒に帰る事が度々あった。
ただ、9年間一緒でも、遊んだことは2、3度くらいしかなかった。
たまたま偶然、何年振りになるだろうか、駅でちっとも変わらない柴田君を見かけ声をかけた事があった。二十歳を超えての再会という事で、二人で安い居酒屋へ行き、薄いお酒で乾杯をした。僕達は近況報告や数少ない思い出話に花を咲かせ、意外と盛り上がった。彼の該博な知識には驚かされた。
今は特殊なエンジニアを務めているらしく誰もが知っている有名な大手会社で結構、いや相当稼いでいるらしい。そして稼いだお金はアニメグッズや、パソコン改造に使っている。着る服やバックは中学生の頃からほとんど変わっていない様に見えた。
柴田君は生身の女性に興味がない。つまり童貞。
真面目に2次元のアニメがパソコン画面から出てこないかと考えていた。
しかしここ最近は、どうしたら自分が2次元の世界に行けるのかを本気で考えているそうだ。人間が想像できることは現実的に可能だ、とどこかで聞いたらしく心の底から信じている。
いつか本当に二次元の世界へ行ける日が来るのだろうか?
二次元へ行けるのであれば、4次元、5次元も可能になるかもしれない。
空間は広がって、もう国単位では管理できなくなってしまうだろう。
SF映画のような世界だ。
僕は柴田君の事が好きでも嫌いでもない。
興味はあるが、すごく仲が良いわけではない。
ただ、ふと思い出す人間だ。もしかしたら、実のところは、憧れているのかもしれない。昔から自分を持っていて、周りの空気に動じなかった。
僕は密かにそういう所をカッコイイと思っていたが、クラスカーストの下の位置にいた柴田君にそういう想いを持つ事は恥ずかしいと思って、すぐにそれを打ち消した記憶がある。
大人になって、改めて見ても、やはり一つの事に精通していて、しかも稼いでるという姿は男なら誰でも憧れる。頼りない声だし独特なしゃべり方だけど、どこか芯の強さは感じる。
童貞ではあるが特別恥じる事でもないし、いつだってその気になれば、お金があれば、卒業はできる。
僕は柴田君の人生を羨んでいるみたいだ。
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