第141話 サーペントの価値

 護衛と共に帰還するレギン伯爵やミエール子爵を見送った俺は、徹夜でアクアディネ達への名付けを敢行する。

 84、人? 柱? からなる水霊達は竜水霊種と言う種族となり、そのステータスはそれまでの3倍弱。

 平均120程度のステータス値となり、見た目もスライムから西洋風人魚へ変わる。

 代表者の『水侯』に至っては亜竜を飛び越え、下級竜化する。


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名前 水侯 性別 女

種族 精霊竜(水)

レベル 83

能力

 生命力 245/1577

 魔力  322/2111

 腕力  180

 知力  325

 体力  211

 志力  317

 脚力  242

スキル

 技能 水魔術(14)

    ウォーターブレス(1)

ユニークスキル

    竜化(1)


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 豊姫に比べても圧倒的な能力なのは、元のレベルと名付け元である俺のステータスの影響だろうと推測出来るが、これでサーペント以上の能力値なのかが気掛かりではある。


「元々、こちらが3人掛かりであれば撃退できましたので問題ないかと…」


 と答えた水侯だが、念のためにサーペントを捕らえてくるように指示する。

 通常個体の水霊3体掛かりで撃退なら、サーペントの能力は水霊の4割増しくらいだと思うが、水棲生物はリスクを避けて早めに逃げ始める可能性も少なくない。


「ただいま戻りました」


 水面が盛り上がり東洋系の竜が、巨大な蛇を咥えて飛び出してくる。

 一見共食いみたいだが、これはサーペントを咥えた水侯の図である。


「うむ。

 鑑定だけしたら逃がしても……」

「ちょっと待った!

 サーペントだぞ!

 あんた! それを金貨5枚で買う!

 職人ギルドに売ってくれ!」


 近くで様子を観ていた職人が俺を押し退けて、水侯に頼み込む。


「主様……」

「構わんよ。

 それはお前の獲物だ。

 好きにしろ」


 困惑して俺に訊ねる水侯に丸投げする。


「…その条件で売ろう」

「ありがたい!」


 大興奮の職人の様子に興味が湧いたのでその価値を訊いてみることにした。

 深い水中で行動出来る生き物の皮だから、耐久性と防水性は完璧だと思うが…


「そんな価値があるのか?」

「サーペントは上質な皮素材だからな!

 職人にとっては一生に1度でも良いから取り扱いたい素材だ」

「そんなものか。

 さて、鑑定を…」


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名前 なし 性別 女

種族 サーペント

レベル 12

能力

 生命力 18/231

 魔力  2/134

 腕力  67

 知力  21

 体力  72

 志力  65

 脚力  48

スキル

 技能 水魔術(3)

    ウォーターブレス(2)


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 …大体想定値ではあるな。

 さて、


「もう良いぞ」

「はい。

 …それで金貨と言うのは?」


 サーペントの首を噛み砕いて、人化した水侯が訊いてくる。

 人と関わらなければ知らないのも必然だな。


「使ったことがないか。

 これだ」

「…湖底にたくさん落ちているやつですね」

「湖に?」

「はい。取ってきましょうか?」

「…いや、お前らで使えば良い。

 それがあれば人族の作った物と交換出来るので便利だ。

 集めておくと良い」

「賜りました」


 下手に出処が不明の金貨を流して、景気の変動とか起きても困る。

 大々的に領地開発には回せんし、かといって日々の暮らしに困るようなこともないので無用だ。

 それよりはアクアディネ達が経済活動に参加するための授業料にした方が有意義であろうよ。


「それにしても竜の系譜とは思えんほど弱いな?」

「辺境伯様。

 サーペントは偽竜ですぜ?

 竜の系譜ってのは亜竜以上の竜を指す言葉です。

 これはただの蛇ですな」

「ほう。

 ここから北の山地にもワイバーンがいるがあれも偽竜か?」

「そうですな。

 偽竜とは言え、群れで襲われては街が滅びる可能性がありますが…。

 そう言えば、あの山々には真竜種が棲んでいると言う噂もありました。

 私が婆さんから聞いた古い噂ですけどね」

「あの山に?

 あそこはウチとも領土を接するし一度訊いてみたい噂だな…」

「いえね。

 あの山々の向こう側には広大な平原があり、その地を支配する竜がいるって噂でさあ」

「…そうか」


 平原が砂漠化し、近くの集落には竜司祭と言う特殊な職業の人間がいた。

 …やはり何かあるな。


「ここから北の山地ですと水環のラーグレイ様ですね。

 水の循環制御を得意とする水竜様ですが、つい最近東の大陸に移られたはずです」

「最近?」

「はい、200年は経っていないです」

「そうか…」


 意外な所から情報を得られたが、ラーグレイが何故移動したのかなどの分からない点も多い。

 …その内本格的な調査が必要だろうな。

 そんなことを考えながら、港造りのために計測へ戻っていく職人を眺めたのだった。

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