第6話 宰相家の住人
当面、ボーグ侯爵屋敷で世話になることになった鷹山一家は、夕食の前にロッド翁の呼び掛けで集まった家族達と対面した。
「まず、儂の家族から紹介しよう。
アストル」
「はい。私はこの家の嫡男、アストル・ボーグ。
事情は父から聞いたよ。災難だったね」
「次は私ね。
アストルの妻のイリス・ボーグよ。
仲良くしましょう。異世界の話を聞かせてね?」
ロッド翁の隣の中年男性とその隣の女性が微笑みながら自己紹介をしてくれる。
ダンディな男前と美人な妻の美男美女カップルだ。
髪が日本ではあり得ない配色で、アストルは青い髪。イリスはピンク色だったりするが。
「ファイト・ボーグです。よろしくお願いします」
「リリーア・ボーグです。私も異世界の話が聞きたいです!」
アストル夫妻の間に立っていた少年少女が最後に自己紹介をする。
ファイト少年は15歳、リリーア嬢は10歳と言うので、真奈美よりやや上だが、近しい年齢層だった。
「領地の方に次男夫婦と長女夫婦が住んでおるが、会う機会もそうないじゃろう。
それよりセイル」
「はい。
侯爵家家令のセイルと申します。ご当主様への言伝て等は私にご用命ください。
鷹山様方は別館を使って生活出来ますように整えておりますが、この者がそちらのキーパーメイドのグレアです」
これぞ執事と言う感じのお爺さんと30代くらいのメイドが頭を下げる。
それに対して、鷹山一家の面々も名乗りを上げて、談笑をしていると、ノックの音が響く。
「遅くなりました。ロベルト隊入ります!」
「おお、すまんな。
祐介殿。こちらはロベルト・フォート。当家の若手で一番の剣の使い手だ。
そして、従騎士のベックとミニア。
後、ここにはいないが当家の施術院の見習いをヒーラーとして派遣する。
この4名がお主と共にダンジョンに潜るメンバーじゃ」
「よろしくお願いします。
騎士ロベルト・フォートです」
「こちらこそよろしくお願いします。鷹山祐介です」
このロベルトが10代後半の若者でベックが30歳。ミニアが13歳。
ヒーラー見習いも10代前半の可能性が高く。そこに38歳の祐介が加わるチグハグなパーティとなるのだった。
「祐介様。早速ですが明日の朝には冒険者ギルドに向かい、冒険者登録と軽めのアタックを行いたく思います。
今日は早めにお休みください。
失礼します!」
「あやつは……。
すまんのう。ロベルトは元々冒険者になりたかったんじゃが、兄を病でなくして、その兄の代わりに我が家の騎士になったんじゃ。
それが護衛とはいえ、ダンジョンに行けると聞いて大喜びなんじゃろう」
「まあ、こちらも早めに生活の基盤を築きたいので」
「そう言ってくれると助かるわい。
グレアよ。祐介殿達を別館に案内せい。
あまり遅くなるとロベルトがへそを曲げるぞ?」
「はい。ご当主様。どうぞこちらへ」
ロッド翁の冗談にクスクスと笑ったグレアを先頭に広間を後にする鷹山一家。
残ったボーグ侯爵家の住人は、
「本当に彼らも大変ですね。
勇者でない異世界人と言う稀有な存在。他の貴族が放っておくとは思えません」
「じゃろうな。ロランド王子にも困ったものじゃ。
勇者と同じ世界の住人じゃぞ?
優れた素養を持つ可能性に気付きもせんとは……」
「しかし、そんな足りない王子だから当家の利益となりましたわよ」
「そうじゃな。ファイトよ。
お主の婚約は一旦白紙に戻す。うまく真奈美嬢に取り入ってくれよ?」
「お爺様?
どういうことです?」
大人達の話についていけないファイト少年はロッド翁の言葉に目を白黒させる。
「勇者の素養は遺伝する。だから、各国の王家が独占してきた。
しかし彼らは勇者でないからそのくくりの外におる。
もちろん、それが勇者の性質であって、異世界人の性質ではない可能性もあるが…」
「その時は寄り子から令嬢を側室に迎え、その子供に継がせればすむ。
相手は後ろ盾のない異世界人だからね」
「あら? その必要はないと思うわよ?
勇者達の世界は相当高度な教育を施しているみたいだし、真奈美ちゃんは今から鍛えれば、十分な侯爵夫人となるわよ?」
「そうか。では我が家の繁栄はファイトの肩に掛かっておるな」
そう言って肩を叩く祖父に、妹より年下の女の子をどうやってっと暗澹な思いを抱く少年だった。
……頑張れ。
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