第84話
獲物を狙うように鴉が上空を飛び回っていた。
また『カーカー』と耳を
井筒屋の中庭にそびえる大樹の周りには、井筒屋の旦那、勘兵衛、長男の勘一、次男の勘次郎、そして愛人の律、その息子の勘三郎、さらに番頭の伊助、当時は女中のお蝶、
全員、茫然と立ち尽くして首を吊った美女のお里を見上げいた。
特に、井筒屋の旦那は憔悴しきった顔だ。
『……』源内も意味が解らない。かすかに身体じゅうが
どうみても自殺ではないようだ。
自ら、あんな上空高く首を吊るす事など不可能だ。
では、誰がどうやって、あれほど空高くお里の遺体を吊ったのだろうか。
まさに妖怪変化、天狗の仕業と言っても過言ではない。
ようやく奉公人らが
『何をモタモタしてンだい…… 早く下ろすんだよ。まったくみっともない❗❗』
厳しい顔で愛人の律が命じた。
『く……』みっともないと言う言葉に源内は眉をひそめた。
『へ、へい……』慌てて奉公人らは梯子を大樹に立て掛けた。
源内は、井筒屋の旦那の元へ詰め寄った。
『だ、旦那…… これは、どういう事ですか……』
険しい
『ぬゥ…、わ、わからン……』旦那は絞り出すように唸った。
『天狗様の仕業さ……』愛人の律が吐き捨てるように呟いた。
『ぬゥ…… 天狗だとォ……』
※。.:*:・'°☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます