第75話 お蘭《ラン》

 ランは賊の紅夜叉よりもひと回りほど小柄だが、スピードでは遥かに凌駕していた。


 尚も、ランは舞うように右に左に剣を振り回し攻撃を繰り出した。


 《キィィーン❗❗ キィィーン❗❗》

と火花が散って、刀剣と大鎌が激しくぶつかり合った。


 疾風雷神のようなランの攻撃にたちまち賊の紅夜叉は追い詰められていった。


『ぬ、ゥ……、クッソォ~ーー……❗❗❗

 た、助けてくれェ~ーー……』

 堪らず、紅夜叉も悲鳴をあげ加勢を頼んだ。


『ぬうゥ……』

 背後から黒装束の賊が二人、三人と姿を現した。

 他の者も夜叉の面を被っていたが、紅くはなく白かった。


 リーダーの紅夜叉だけが紅い面を被っているのだろう。

 もちろん二人とも屈強な男性だ。

 けれども、いくら加勢しても所詮、烏合うごうの衆だ。


 ランの敵ではない。



 閃光のような青い稲妻が走り抜けていった。


 圧倒的なランのスピードに賊の紅夜叉らも防戦一方だ。


 もはや、どちらが優勢か、火を見るよりも明らかだ。

 まるで相手にはならない。


 しかしランは決してとどめを刺すような事はしないみたいだ。やはりアンドロイドは人の命を奪わないのだろうか。


 圧倒的な力の差を見せつけ敵から戦意を奪っていった。


「うう……」茫然と立ち竦み、僕はランと紅夜叉ら賊一味の戦闘たたかいを見つめていた。


《うッおおおおおおおォォ~ーー❗❗❗❗》

 ラン咆哮え、稲妻のように剣が一閃した。

 『キーン❗ キーン❗』と激しい金属音がして、目映い火花が散った。


《お前らに、は殺させないィィィ~ーー~ーー❗❗❗》

 ランが怒鳴ると、大きな二つの双眸ひとみ黄金こがね色に輝いた。


「うう……」ナゼか、ランは僕の正体が写楽だと知っているみたいだ。





 ※。.:*:・'°☆

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