第64話 セクシードール お蘭

 ああ……



 かすかにズキズキと頭が痛む。



 いつの間にか、僕は熟睡していたようだ。

 いったい、どのくらい寝ていたのだろう。


 ほんの数分だったような気もするし、かなり時間が経ったような感じもした。




 漆黒の闇の中、徐々に意識が覚醒していくみたいだ。

 



 今までの事は全て夢か、幻だったのだろうか……





 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆




 今、思い返すとあれは、ずい分と前のような気がした。



 

 確か、僕は人気漫画家、如月アスカ先生のスタジオに缶詰カンヅメになっていた。




 僕の職業は漫画家のアシスタントだ。


 手取り十五万、社会保障などいっさいない。部屋代光熱費を払うと、ほとんど手元には残らない。


 いつも月末は預金残高がゼロだ。

 スタジオにいる間は、先生の経費なので食費は、いっさい掛からない。


 いざとなればスタジオで寝泊まりすれば、食うことだけは困らない。

 それが、せめてもの救いだ。



 だが、それでもブラック職場の極致だろう。

 本当に漫画が好きでなければ続かない。




 その日も三日間、完全徹夜カンテツで作業し、詰まらないモブシーンを描き上げた。

 僕の描きたいのは胸踊るようなアクションシーンや男女が汗まみれになって、激しく絡む、合体ジョイントライブだ。


 こんな単調なモブシーンばかり、うんざりしていた。

 だが、如月アスカ先生は細部まで手を抜かない。

 アシスタントは全員、悲鳴をあげていた。



 昔、何日も徹夜が続き、アシスタントが、

『俺は、あんたのじゃねぇ~ー❗』と切れて、途中で仕事を放棄したヤツもいたと聴いた。



 三日も徹夜が続けば解らない話しでもない。




 ようやく深夜に仕事も終了し、帰宅する途中、立ち寄ったコンビニで悲劇が待ち受けていた。


 駐車してあった黒塗りの高級車が急発進し轢かれてしまった。




 あわれ、僕の短い人生の幕を閉じた。





 彼女いない歴、年齢と一緒……


 しかも正真正銘、童貞チェリーボーイだったのに……


 そりゃァ、あんまりだ。





 しかし捨てる神有れば、拾う神有り……



 



 僕は江戸時代の平賀源内に転生し、もう一度、人生をやり直す事になった。




 芸者のようなおちょうと初めての口づけをし、美少女で憧れのアイドル 高原ユウのそっくりのおユウ夫婦めおとになった。


 もちろん念願のキスだってした。




 まだ合体ジョイントライブはしてないが、いずれ機会があれば思いきり敢行したい。



 何せ、アイドルの高原ユウそっくりの美少女と夫婦めおとになれたのだ。


 まったく夢のような体験だ。



 いや、本当に夢だったのかもしれない……


 とても、リアルな体験とは思えない。




 そして、今……






 僕のかたわらには、巨乳のセクシードールが添い寝をするように横になっていた。

 



 甘くて良い匂いが僕の鼻孔に漂ってきた。




「うう……😳💦💦」

 セクシードール おランだ。



 肌が触れあうほど近くに寝ていた。


 

 ビーナスのように美しくまさに造形美の極致だ。



 目を見張るような巨乳をながめているだけで、僕の下半身は熱くたぎっていった。



 吸い寄せられるように彼女の二の腕に手を伸ばした。



『ああァ~……✨💕』

 何て柔らかくて滑らかな肌触りだ。



 これが本物の女子の腕なのだろう……

 

 厳密に言えば、おランはセクシードールなのだが……



 撫でるように僕は彼女の腕から肩口へ指先を這わせた。

 異様に胸が高鳴った。


 ゆっくりと指先が胸の膨らみへと伸びていった。



 ああァ~……



 

 どうやら、この感触は夢ではなかったらしい。


 



 僕は、本当に江戸時代に転生したようだ。


 



 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

 

 

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