第38話 【東洲斎写楽】

「ま、まさか……😓💦💦💦」

 ザワザワと嫌な胸騒ぎがした。

「そ…、そんなはずはない……」

 軽く眩暈めまいがした。包帯をした頭を押さえた。また傷痕がズッキンと疼いた。



 これまでも僕は【東洲斎写楽】の事は調べてきた。



 同じ写楽と言う名前もあるが、単純に『写楽別人説』に興味を抱いたからだ。


 どの文献を調べても写楽は、版元の蔦屋重三郎が仕掛けた浮世絵師だとしるされていた。





 東洲斎写楽は寛政六年五月に彗星のように現われ、およそ十か月の間に、百四十二枚の役者絵を発表し、その後、こつ然と姿を消した稀代の天才浮世絵師だ。




 僕の名前は、その【写楽】と言う浮世絵師からつけられたモノだ。



 そもそも【写楽】が存在しなければ、僕の名前もおのずと別のモノになっただろう。




「あ、あの…… だって、【写楽】は……

 蔦屋の旦那がプロデュースした浮世絵師でしょ……❓❓」

 それ以外、有り得ない。



 一介の浮世絵師が勝手に出版できるはずがない。

 北斎などは、金に窮し弟子に画号を売り、何度も改名していた。

 北斎と言う画号も晩年の名前だ。




 もちろん、位の高い松平定信のようなセレブが名前を秘して【東洲斎写楽】の名前で、作品を発表したと言う事も考えられる。

 実際、そう推測した小説家もいた。


 しかし、それは可能性がある程度のモノだ。

 松平定信が浮世絵を描けるのかどうかさえ危うい。


 常識的に考えて【東洲斎写楽】を仕掛けたのは、この蔦屋重三郎しか有り得ないのだ。


「えェ……❓❓ プロデュースッて……

 さっきから何だい❗❗ 写楽なんて聴いた事もねぇ~よ❗❗」

 蔦屋の旦那は顔をしかめて首を横に振った。ウソでは無さそうだ。本当に知らないのだろう。


「そ、そんなァ~……」写楽がいない……

 そんなバカな……

 それでは、僕の名前の由来が……

 軽い眩暈めまいが僕を襲った。


「大丈夫か❓ センセェ……」 

 心配そうにユウが僕の腕にしがみついた。柔らかな胸の膨らみが僕の二の腕に押しつけられた。


「ああ…、平気だよ……😅💦💦」

 苦笑し、優しくユウの華奢な肩を抱きしめた。なんて可愛いなんだ。

 暖かくて、甘く良い匂いがした。


 僕は、ひとりではないんだ。僕のすぐソバには、おユウもついている。



「旦那…… 写楽は、後世に残る稀代の天才浮世絵師ですよ……❗❗❗

 もっとも有名な浮世絵師と言っても過言じゃない❗❗❗

 蔦屋の旦那が版元で……」

 捲し立てるように早口で説明した。

 僕の考えでは、【東洲斎写楽】は【北斎】に間違いない。


 北斎ならば、版元の蔦屋重三郎も勝負を賭けてでも出版しただろう。


 だが、蔦屋の旦那は僕の問いに答える事無く、肩をすくめ苦笑いした。


「ケッケェ……😆🎶✨ 悪いな…… 

 源内❗❗ ワシもお前の話に付き合ってられんのだ」

「え……❓」


「あとの事はくれぐれも頼んだぞ……」

 笑顔で僕の肩をポンと叩いた。

「うう……」


「おい、おユウもおラン悪戯ワルさをするンじゃないぞ……❗❗」

 旦那は、ユウに釘をさしておいた。


「うン……」わりと素直にユウは微笑みを浮かべ頷いた。


 だが、イタズラッみたいに紺碧の瞳を輝かせた。


 何かを企んでいる様子だ。




 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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