第26話 九五郎

 九五郎は、見るからに精悍なイケメンだ。ただ切れ長のつり目が陰険な感じを受けた。

 

 平賀源内にとって、九五郎と言う名前には浅からぬ因縁があった。


 九五郎と言う男は平賀源内の門人だったと伝えられている。


 そして源内が五十一歳の時、詳しい事情は不明だが、源内は九五郎をあやめ、その後、囚われの身になり獄中で餓死する事になった。

 直接の死因は破傷風だが、源内は食事をしなかった事が死期を早めたのだろう。


 一説には、借金のトラブルが動機だったとも言われるが、後の研究で、源内が同性愛者の可能性もあるため、痴情のもつれが原因とも推測された。


 その九五郎が、【伝説のアイドル】 高原ユウの命を奪った黒須クロス久とそっくりだなんて……

 これは、運命のイタズラなのだろうか。


「ン…、どうしたの❓ センセェ……」

 おユウが、心配そうに僕の袖を引っ張り声をかけてきた。


「え……」知らぬ間に僕は九五郎を睨みつけていた。よほど怖い形相だったのだろう。


「おいおい源内❗ 九五郎が何かしたのか」

 蔦屋の旦那も僕に声をかけた。


「あ、いや、別に……」

 今は何もしていない。

 九五郎が、黒須クロス 久に似ているだけだ。


「九五郎…… 下がって良いぞ❗」 

 蔦屋の旦那は彼に命じた。

「ハイ…… 旦那様、失礼します❗❗」

 九五郎はうやうやしく頭を下げゆっくりと部屋を後にした。

「……」僕は彼の後ろ姿を睨んでいた。


 この九五郎なのだろうか……

 源内が彼をあやめ獄中へ入るとされるのは……


「おいおい、源内❗ 九五郎なんて、どうだって良いんだ❗❗」

 蔦重の旦那は注意を促した。

「お前さんに頼みたいのはこっちだよ」

 敷布にくるまれたモノの方が遥かに大事なようだ。


「ン…、はァ~…」いったい何なんだろう。

 この怪しげな物体は……

 この中に【天下を揺るがす財宝】が入っていると言うのか。

 確かに興味はあるが……

 全体のフォルムからすると女性のようにも感じる。


 まさか、人がくるまれているのだろうか……

 それとも、死体だとしたら……


「フフ……✨😆🎶✨ 蔦重の旦那ァ~❗❗

 なんですか❓❓ これは……」

 興味津々にユウが包布に手を伸ばした。真っ白な包布に手が触れようとした瞬間、

「こら、おユウ⚡😡⚡💢💢💨

 やたらに触るんじゃねぇ~~ー❗❗」

 突然、旦那は叱るような口調で怒鳴った。


「えええェ……😲💦💦💦」

 思わず、おユウもビックリして手を引っ込めた。

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