第25話 【由井正雪】

「ッで、源内よ❗❗ 折り入って、お前さんに頼みがあるンだ……」

 不意に蔦重は改まった顔で僕に近寄った。

「え……❓❓ 頼みッて…… なんですか」

 

「お前さんが意識不明の間、飛んでもねぇ~【シロモノ】が見つかったンだよ……❗❗」

 少し耳元へ顔を寄せ声をひそめた。


「え……? 飛んでもない【シロモノ】……

 いったい、何ですか? それは……」

 

「うゥ~ン……」おもむろに蔦重の旦那は辺りを見回した。

『カラクリ屋敷から出てきた……

 【天下を揺るがす財宝】さ……』

 さらに、蔦屋の旦那は僕の耳元へ小声で囁いた。


「え…… そ、そんな天下を……」

 なんだッて言うんだ……

 それは。


『この事は…… 決して口外してはならンぞ……』

「は、ハイ……」もちろん無闇に口外はしないが……

 いったい、どんな秘密なんだ……


『おそらく…、ヤツらは、くわだてていやがるンだ……』


「な❓❓ な…、何ィ~ーー❗❗❗❗」

 『幕府転覆』を……

 あまりにも話しが飛躍しすぎだ。


 まさか、『慶安の乱』の首謀者…、【由井正雪】じゃあるまいし…… 


 由井正雪は江戸時代前期の軍学者だ。

 一時、門下生は三千人以上いたと言われ、『由井正雪の乱』をくわだてた首謀者として伝えられている。


 いったいどんな飛び道具で幕府転覆をはかるのだろう。


「ケッケケェ~ー……😆🎶✨

 今、その証拠を見せてやるよ❗❗」


「ン…、証拠ッて……❓」

 いったい僕に何を見せると言うんだ。


 蔦重の旦那は廊下へ顔を出し、かなり大声で呼んだ。

「おォ~ーい❗❗ 例の……

 【あれ】を持って来い❗❗」


「え……❓」いったい例のあれッて、なんだろう。

 

「ウッフフ……😌✨✨ 蔦重の旦那❓❓ 

 また玩具カラクリですかァ~❓」

 おユウが呆れたように苦笑いを浮かべた。


『え、カラクリ……玩具オモチャか』

 なァ~ーんだ……

 平賀源内の僕に、玩具オモチャの修繕でもしろって言うのか。

 

 やがて、蔦重の配下の男性が現れた。

 屈強そうな男は大事そうに白い敷布シーツに包まれた【モノ】を両腕で抱きかかえて運んできた。

 配下の男は顔を伏せているため、表情は読み取れない。

「ン……」いったい何を運んできたのだろうか。


 敷布シーツくるまれているため中身は解らないが、女性ひとりの大きさの物だ。

「ン……😒💦💦💦」

 まさか、死体ではあるまい。


「そこに寝かせて良いか❓」

 蔦重の旦那は顎で布団を差した。

「あ、ハイ…… ど、どうぞ構いませんが」

 人ひとり分のスペースをけた。


 いったい何なんだ。この敷布の中身は……

 配下の男性は丁寧に布団の上へ置いた。よほど大切なモノのようだ。


「あ、済まなかったな…… 九五郎❗❗」

 蔦重の旦那はねぎらった。

「な、何…… 九五郎❗❗」

 思わず、僕は伏せている彼の顔を覗き込んだ。

「な、何ィ~ー❗❗ お前はァ~~ー❗❗」

 僕は九五郎の顔を見た瞬間、思わず大声で叫んでいた。


 一度、見たら忘れるはずのない顔だ。

 黒須クロス久……


 【伝説のアイドル】高原ユウを殺した男だ。




 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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