第19話 

「親にも…… 兄弟肉親にも疎外うとまれて…… 

 このまま…… 誰もおユウの事なんか助けてくれないと思って諦めていた……」

 抱きしめている彼女の身体が、かすかに震えていた。

 ずっと、こらえていたのだろう。

 自分の境遇を……


「親たちは…… おユウに居なくなって欲しいから……」


「うう……」そんな事はないとアドバイスする事は簡単だが、何のはげましにもならない。


遊郭あそこへ行けば…… お腹いっぱいモノを食べられる…… もう飢餓ヒモジイ思いをしなくても…… 綺麗な着物も着れる…… 極楽のようなトコロ……

 でも、そんな事はマヤカシ……」

 小さく首を振った。流麗なツインテールの髪が揺れた。


「う……」そうだ……

 そんなのは綺麗ごとだ。うわべだけの言葉だ。いくらモノを知らない子供だって承知している。

 単に、親たちがくちらししたいだけの口実だ。


遊郭あそこへ行ったら最後……

 死ぬまで働かされる…… 綺麗なうちは、蝶よ花よと、おだてあげるけど…… 

 そのうちボロ雑巾のように…… 

 捨てられる……

 みんなそんな事は解っているのに……」


「ああ…、おユウ…… 痛いほど解かるよ」

 僕は、華奢な彼女を優しく抱きしめてあげる事しか出来ない。


 もっと気の効いたセリフで彼女をなぐさめてあげたいが、不器用な僕にはそれもかなわない。

 優しく頭を撫でてあげた。


 彼女は、何ひとつ悪くないのに差別の対象にされる。

 瞳や髪の毛の色が変わっているだけで……

 親や肉親からも疎外されてきたのだろう。


「でも…… センセェだけは、そんなおユウを大切に扱ってくれた……」


「うン……」そうだったのか……

 彼女は、これまで本当の意味で誰かに愛された事がなかったのかもしれない。



 こんなにもはかなげで可愛いのに…… 

 


 彼女が無邪気にたわむれる事が出来るのは、僕……



 いや、平賀源内だけなのだろう。


 ああ…… なんて、けなげで可憐でいとしいんだ。


「だから……👄✨✨ だから、センセェには恩があるの」

「え…、そんな恩なんて感じる事はないよ」


「センセェが何者かに襲われて……

 このまま死んじゃったら……」

 大きな瞳からポロポロと涙がこぼれた。


「フフ、泣くなよ……😅💦💦 おユウ……」

 優しく頬を撫で、彼女の涙を拭った。



 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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