第7話 【伝説のアイドル】高原ユウ

「じゃ、また失礼、センセェ……👄✨💕」

 慌ただしく身だしなみを整え、お蝶が屋敷を出ていった。


「あァ~あ……😔💦💦」

 あと少しだったのに残念だ。



 童貞の僕にとって、合体ジョイントライブは、妄想の中でしか決行できない。





 彼女が屋敷を去っていくと途端に、周辺あたりは静まり返った。


 濃厚な美女の薫りだけが部屋の中を漂っていた。



「ッゥン……😔💦💦💦」

 だが、いくら考えても、さっきのお蝶との情事ことが夢か現実うつつか、まぼろしか判断がつかない。



 唇に残るキスの感触は確かに本物だった。しかしどうにも全てが現実離れしている。




 第一、僕が源内だと言う事も半信半疑だ。



 もしもこれが事実だと受け入れるとすれば、僕は江戸時代にタイムスリップし源内に転生した事になる。




 もちろん医者が江戸時代にタイムスリップしたり、天然の高校生が戦国時代の織田信長になった話しもあるくらいだ。




 漫画家の名もないアシスタントが平賀源内になっても可笑おかしくはない。


 いや、実際に、この体験を僕が漫画にしてみたいくらいだ。




 それにしてもよりにもよってナゼ、僕なのだろう。

 僕には歴史を変えるような『野心』や『度胸』などない。




 絵に描いたような小心者チキンで、ただの平凡でブサイクな童貞チェリーボーイだ。 


 これが《神のイタズラ》だとしても完全に人選ミスだろう。




 やはり事故の後遺症なのか、身体は、まだ本調子とは言えない。


「くッ……😣💦💦」

 いまだに違和感があった。

 軽くストレッチをしても全身に神経が行き渡ってないようだ。




 この分では、自由に飛び回る事は出来そうにない。




 何げに、部屋を見渡してもテレビなどの電化製品も何も見当たらなかった。


 布団の周辺を探したが、僕のスマホもないようだ。



「ン……❓❓ あれは」

 部屋のすみに鏡台らしきモノがあった。布でカバーされ表面が隠されていた。



 いったい怪我の具合は、どんなモノなのか、一度確認してみようと近寄って鏡台の前に座った。


 額の包帯をさすり、ゆっくりと姿見のカバーをめくった。


「えェ……❓❓」

 その瞬間、自分の目を疑った。



 鏡に映った顔は、いつもの見馴れたブサイクな顔ではない。

「うう……❓❓」

 鏡には誰か知らない包帯を巻いたイケメンがうつっていた。


「ま…、まさか……、何ィ…… 誰か後ろにいるのか❓❓」

 すぐに背後を確かめたが、もちろん誰もいない。

 間違いなくこの部屋にはだけだ。


「うゥ~、ン……😔💦💦💦」

 落ち着いて、もう一度、じっくりと鏡を見た。

 タンコブの出来た辺りを軽くでると、かすかにズキィッといたんだ。


「痛ッて……😣💦💦」当然、鏡に映ったイケメンも同時に顔を歪めた。


 ためしに頬をツネッたが、鏡に映ったイケメンも同じ様な仕草をしていた。


「そんな…、バカなァ~……」

 軽く鏡台の面や裏面を拳で叩いたり、何度も確かめたが仕掛けなど、いっさいない。


 プロジェクターがそなわっているワケもない。


 ごく普通の鏡だ。ただかなりの年代物だろうが……。



 こんな手の混んだドッキリなど有り得ない。



 間違いなく、ここに映っているイケメンは現在の僕の顔……。



 平賀源内の顔なのだろう。



 ゾワゾワと身体じゅうに鳥肌が立った。



「マ、マジで…… 僕は【平賀源内】に転生したのか」

 これまでは半信半疑だった。


 いや、ほとんど疑っていたと言う方が正しい。 

 どうしても自分がタイムスリップしたように思えなかった。




 だが、今ここで鏡に映った顔を見て納得せざるを得ない。



 フラフラと中庭へ出てみた。

 庭は、かなり手入れが行き届いていた。


 あるじの源内は、かなりの資産家のようだ。池には大きな鯉が泳いでいた。


「……」青く澄んだ青空の彼方には高層ビルなどひとつも見えない。


 垣根まで行き、よじ登って外の景色を眺めた。


「あ……❗❗❗ こ、これは……」

 外には時代劇でしか見た事のない光景が広がっていた。

 長屋に田んぼや舗装されていない土の道が続いていた。



「……」言葉もなくただ景色を眺めていた。



 ここは、僕の知っている東京ではない。



 どうやら本当に江戸時代へタイムスリップしたみたいだ。



 がく然として眺めていると、遠くの方から女子のアニメ声が聞こえた。



「あァ~~ーー😆🎶✨ センセェ~ー❗❗」

「え……?」

 誰かと思って、アニメ声のした方を見ると一人のハーフの美少女が僕に向かって手を振り、元気よく駆け寄ってきた。

 


「センセェ~ー~ーー……😆🎶✨」

 丈の短い着物から覗いて見える白く長いき出しの太腿が眩しい。


「うゥ~…!」このは……

 まさか……


 ドキッと心臓がはずんだ。

 おそらく、この美少女がお蝶が言っていたバテレンの娘……

 おユウだろう。



 大きな紺碧の瞳がキラキラと輝き、人形みたいに可愛らしい美少女だ。ややブラウンの髪をツインテールに結んでいた。

 


 天使のように可愛らしい。



「ゴックン……😳💦💦💦」

 僕は、一瞬でその妖精みたいな美少女に魅せられた。




 あり得ない事だが、僕の大好きだった美少女アイドル 高原ユウに瓜二つだ。





 2020年のあの夏……




 十七歳で、自らの命を絶った……



 【伝説のアイドル】高原ユウに……







 ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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