第2話 美女と……😆🎶✨

「どうしたの❓❓ 源内センセェ……」

 また彼女は僕に向かい《源内》と呼んだ。

 潤んだ瞳で、僕を見つめて言ったから間違いないようだ。


「う、源内……」眉をひそめ何度もまばたきして呟いた。



 僕の知りうる限り、源内と言って、思い浮かぶのは【平賀 源内】しかいない。


 




 ☆゚.*・。゚※。.:*:・'°☆





 小学校の頃、夏休みの自由研究で調べたので平賀源内の事なら普通の人よりは詳しい。



 平賀源内は、江戸時代中頃の発明家だ。




 日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと異名を取る稀代きだいの天才だ。



 エレキテルや寒暖計、火乾布かかんぷなどを発明し、物産会などを開催し手広く商売をしていた。


 また今で言うコピーライターとして、鰻の蒲焼きのキャッチフレーズ、『土用のウシの日は鰻』と言う謳い文句を考えたのも彼だった。



 ほかにも浄瑠璃や戯作、浮世絵もたしなみ、秋田蘭画は源内が秋田を訪れた事により誕生したとされる。 



 また版元の蔦屋重三郎とも昵懇じっこんであった事から【東洲斎写楽】の正体は『平賀源内』ではないかと言う説をとなえた作家もいた。



 さらに晩年は壮絶だ。



 五十一歳の時、門人の九五郎をあやめ獄死するが、未だにその門人をあやめた動機は不明だと言う。




 かつては借金が元で門人の九五郎をあやめたと言うのが定説ではあったが、最近では門人との同性愛による痴情ちじょうもつれと言う説が有力だ。



 その後、獄死した源内の検死をしたのが、盟友、杉田玄白であった。



 杉田玄白とも親密で『解体新書』の翻訳にも平賀源内は関わったとされる。



 しかも源内の墓には遺骨がなかったと言う話しも残っていて、玄白が手筈を整え、源内を何処いずこへと逃がしたと言う逸話もあった。



 しかし僕が、そのくだんの『平賀源内』であるワケがない。



 僕は、写楽だ。


 平成生まれの東洲とうす写楽、それが僕の名前だ。


 平賀源内であるはずがない。




 ☆゚.*・。゚※。.:*:・'°☆






「あ、あのォ~……、さっきから、源内センセェッて呼んでるけど……🙄💦

 もしかして源内ッて…、僕の事……」

 角の立たないように窺った。



「え、何よ…… 決まってるでしょう……

 他に源内センセェなんて居ないわよ」



「いや、でも…… 僕は、写楽シャラクッて名前なんだ」

「シャラク……❓❓ 何、それセンセェ」



「何、それッて、キミこそ誰かと勘違いしてない❓ 写楽シャラクだよ❗❗」



「フフ…、何、冗談を言ってるのよ。シャラクッて、今度の戯作の登場人物なの」

 おもむろに彼女の手が僕の下腹部に伸びてきた。



「あ……」僕は敏感な部分を触られ、ピクッと反応してしまった。



「フフ…、どうしたの❓ 今日のセンセェは、ずい分と敏感ねぇ」



「いや…、あの……」僕はドキドキしてきた。女性にそんな所を触られたのは初めてだ。しかも女優みたいに華麗な彼女ひとになんて夢のようだ。



「ねぇ、あの子と本気で所帯を持つ気なの❓」

「え、あの子ッて……」

 いったい誰の事だろう。童貞チェリーボーイの僕が、誰かと所帯を持つワケがない。



 自分ひとり食べていくのが、やっとなのに所帯を持つなんて夢のような話しだ。



「何よ。しらばっくれて…… おゆうッて、バテレンの子よ❗❗」



「お夕……❓❓」バテレンの子……

 全く意味がわからない。


「ねぇ、大丈夫❓ ボケたのかしら……

 事故で頭を打って昏睡状態だって、聞いたけど……」

 綺麗に揃えられた眉をひそめた。


「え……」事故で……

 うゥ~ン…… そうか。


 やはりあのコンビニで僕は事故に遭ったんだ。その時、事故の瞬間が脳裡をよぎった。



 不意に、コンビニの駐車場で黒塗りの高級車が急発進し僕に襲いかかってきた。

 避ける間もなく僕は車に轢かれてしまった。



「ううゥ~…… キミは」

 起き上がろうとしだが、自分の身体ではないようだ。

 うなる事しか出来ず、全く言う事をきかない。


「やァ~ねぇ、センセェ…… お蝶の事を忘れたのォ~❗❗」

 少しねた顔で上からかぶさるように抱きついてきた。


「うゥ~……」

 彼女の柔らかな胸が僕の胸板でグニャリと押しつぶされたように変化した。

 僕は、緊張で身体を強張こわばらせた。



「あ、ゴメン…… まだ苦しい❓」

 甘い吐息が僕の頬を撫でていった。

 キスしそうなほど唇が近くにあった。


「い…、いや、別に」

 僅かに首を振り、苦笑いを浮かべた。

 頭はぼんやりしていたが、下半身はヤケに熱く火照ほてっていた。


「フフ…、でも良かった…… 本当に、意識を取り戻して」

 彼女は仰向けに寝ている僕の下腹部にまたがり、両頬を優しくかかえた。ゆっくりと顔を近づけてきた。


 唇が触れあうような態勢だ。

 もちろん僕はキスなどした事がない。


「ゴックン……😳💦」生唾を飲み込んだ。


 初めての経験に僕は顔を紅潮させ、全身が小刻みに震えた。

 ときめきが止まらない。



「フフ……👄✨💕💕」

 お蝶の紅く妖艶な唇から舌が覗いて自らの上唇を舐めた。ゾクゾクするほど淫靡みだらな気分だ。

 アドレナリンが一気に上昇し、心拍数も上がった。



「う……」僕も本能には逆らえない。

 





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