姚興22 十六国ー伐涼2 

後涼こうりょうに攻撃を仕掛けている姚碩徳ようせきとくの元に、

涼將の姜紀きょうきが数十騎を率いて亡命。

姚碩徳に言う。


呂隆りょりゅうは孤立しております。

 城内に助けるものはおりません。


 姚碩徳様が大軍でもって

 押し寄せられれば、

 情勢は降伏に傾きましょう。


 が、それは表向き。

 おそらく心服は致しますまい。


 どうかこの姜紀に

 三千の兵をお与えください。


 王松怱おうしょうこつ焦朗しょうろう華純かじゅんとともに

 その隙を窺ってまいりましょう。


 呂隆なぞ取るに足らぬので

 放置しておけばよいのでしょうか。

 これは違います。


 いま、南涼なんりょう禿髮利鹿孤とくはつりろくこ

 富国強兵を進めております。

 これに姑臧こぞうを取られれば、

 その勢いは増す。


 沮渠蒙遜そきょもうそん李暠りこうはおそらく、

 かの者には勝てません。

 おそらく降伏することでしょう。


 ともなれば涼州りょうしゅうに、

 後秦にとっての大敵が

 出現いたしましょう」


姚碩徳は姜紀を武威ぶい太守とし、

兵三千を配し、周辺地域の

守備及び慰撫を任じた。


数か月もの間、姚碩徳は姑臧を包囲。

城内には寝返りを考えるものが増える。

姚碩徳は包囲の一方で

周辺地域の慰撫にも邁進。

また守備隊を派遣したり、

食糧消費を抑え、

持久戦の構えを見せもした。


そのため、ついに呂隆は

使者に貢物を持たせ、降伏。

姚興ようこうはその決断を讃え、呂隆を

鎮西大將軍、涼州刺史、建康けんこう公とした。


この年、河東かとう蒲阪ほはん県の阿育王寺あいくおうじで、

まばゆい光が生じた。

何が起こったのか、と人々が訝しむ中、

光の生じたあたりを掘れば、

そこからは仏の骨が出てきた。


そのまばゆさは

すさまじいものであったという。




八月、涼將姜紀率數十騎來奔、說碩徳曰:「呂隆孤、城無援。明公以大軍臨之。其勢必請降然。彼徒文降而已、未肯遂服也。請給紀歩騎三千、與王松怱因焦朗、華純之眾、伺其釁隙。隆不足取也、不然。今禿髪在南兵強國富。若兼姑臧、而據之、威勢益盛。沮渠蒙遜、李暠、不能抗必將歸之如此。則為國家之大敵矣。」碩徳乃表紀為武威太守、配兵三千、屯據晏然。碩徳圍姑臧累月、城中多謀外叛。碩徳撫納夷夏、分置守宰、節食聚粟、為持久之計。九月、呂隆遣使奉貢請降。興答報嘉羙、拜隆鎮西大將軍、涼州刺史、建康公。是年、河東蒲阪阿育王寺、時出光明人咸異之。掘得佛骨於石亟中、照耀殊常。


八月、涼將の姜紀は數十騎を率い來奔し、碩徳に說きて曰く:「呂隆は孤にして、城に援無し。明公は大軍を以て之に臨むべし。其の勢、必ずや降然なるを請わん。彼の徒、文降を已にせど、未だ遂には服せるを肯んぜざるなり。紀に歩騎三千を給えんと請う。王松怱と焦朗、華純の眾は、因りて其の釁隙を伺わん。隆は取るに足らざるなり。然らず。今、禿髪は南に在りて兵は強く國は富む。若し姑臧を兼なば之に據し、威勢は益まる盛んたらん。沮渠蒙遜、李暠は抗す能わざれば、必ずや將に之に歸さん。此の如きなれば、則ち國家の大敵為らん」と。碩徳は乃ち紀に表し武威太守と為し、兵三千を配し、屯據晏然せしむ。碩徳の姑臧を圍むこと月を累ね、城中に外叛の謀多し。碩徳は夷夏を撫納し、守宰を分置し、節食し粟を聚め、持久の計を為す。九月、呂隆は使を遣りて奉貢し降を請う。興は嘉羙なると答報し、隆に鎮西大將軍、涼州刺史、建康公を拜す。是の年、河東、蒲阪、阿育、王寺にて、時に光明出で、人は咸な之を異とす。掘らば佛骨を石亟中に得、照耀せること常と殊とす。


(十六国56-4_暁壮)




十六国春秋のこの辺の記述は資治通鑑由来なんでしょうかね。ここで引用してる十六国春秋のテキストは清の欽定四庫全書本由来なんですが、その底本が明の屠喬・孫項琳によるものなんですよ。つまり資治通鑑のあと。おそらく資治通鑑に盛り込まれていた北魏崔鴻の手による十六国春秋の内容なんだと思うんですが、ニントモカントモ。ひとまず姚興さんの仏教ラブアピールが盛り込まれているのににっこりしてしまいます。


この十六国春秋は、そのまま晋書では一瞬で片のつく柴壁防衛戦の話を詳細に記してくれています。なのでそのままもう少し十六国春秋を追うのです。

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