王永3  敗死      


苻丕ふひ様のもと、姚萇ようちょう潰すデ!

そう王永おうえいが呼びかけると、

天水てんすい郡の羌延きょうえん(おそらく羌宇きょううの親族)、

馮翊ひょうよく寇明こうめい河東かとう王昭おうしょう新平しんへい張晏ちょうあん

京兆けいちょう杜敏とびん(おそらく杜預とよの同族)、

扶風ふふう馬郎ばろう建忠けんちゅう高平こうへい王敏おうびんなどが、

ワイもやるで! と立ち上がる。


それぞれが、数万の兵力を抱えていた。

かれらが使者を遣わせてきたので、

苻丕はかれらに

將軍、郡守、列侯の地位を与えた。


苻丕は王騰おうとう晉陽しんようを守らせ、

楊輔ようほには壺關こかんに駐屯させ、

自らは数万の兵を率い、

平陽へいように進出、拠点を置く。


ここで長安ちょうあんから、慕容永ぼようえいがやってくる。

慕容永、苻丕の勢力圏を通過し、

東に戻りたい、と要請してきた。


はぁ!?

慕容永の率いる勢力は、慕容沖ぼようちゅうの残党だ。

苻堅ふけんを殺そうとした、あの。

そんなやつの願いを叶えてやる義理など、

苻丕にはない。


うるせーしなすぞこら、

苻丕、王永と苻纂ふさんを派遣。

更には俱石子ぐせきしを先鋒に任じ、襄陵じょうりょうで決戦。

惨敗し、王永も戦死した。


なおこのとき、

弟の王皮おうひ略陽りゃくよう太守であったが、

領地を献上し、姚萇に降伏した。




於是天水羌延、馮翊寇明、河東王昭、新平張晏、京兆杜敏、扶風馬郎建忠、高平牧官都尉王敏等,咸承檄起義,各有眾數萬。遣使應丕,皆就拜將軍、郡守,封列侯、冠軍。丕留王騰守晉陽,楊輔戍壺關,率眾數萬,進據平陽。慕容永遣使假道東還,丕不許,乃使永與苻纂攻之,以俱石子為前鋒都督,與慕容永戰於襄陵,石子大敗,永死之。皮時為略陽太守、以郡降於姚萇。



是に於いて天水の羌延、馮翊の寇明、河東の王昭、新平の張晏、京兆の杜敏、扶風の馬郎に建忠、高平の牧官都尉の王敏らは咸な檄を承け義を起て、各おの眾數萬を有す。使を遣りて丕に應ざば、皆な將軍を拜し、郡守に就き、列侯に封ぜられ、軍に冠ず。丕は王騰を晉陽に留め守らしめ、楊輔に壺關を戍せしめ、眾數萬を率いて進みて平陽に據す。慕容永は使を遣りて道を假り東に還ぜんとせど、丕は許さず、乃ち永と苻纂をして之を攻ましめ、俱石子を以て前鋒都督と為し、慕容永と襄陵にて戰い、石子は大敗し、永は之に死す。皮は時に略陽太守為りて、郡を以て姚萇に降ず。


(十六国42-24_衰亡)




苻丕のところとあまり情報量的には変わらない感じですが、王皮の振る舞いが地味に現実的なのが楽しいです。「親父の主の仇? そんなん俺になんの関係があんの?」とばかりの振る舞い。どこまで額面通りに受け取るかみたいな話はありますが、リアリストな感じがして、ある意味王永よりも好きかもです。

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