王永2  苻丕との合流  

王永おうえいは勝ちに乗じて突き進む。

唐城とうじょうにまで進出し、慕容麟ぼようりんと対峙した。

慕容垂ぼようすいは援軍として、慕容佐ぼようさを派遣。

平規へいきと共にしょうを攻撃させた。

背後をつかれた、となるだろうか。


王永は死力を尽くして戦うが、

じりじりと追い込まれてしまう。

ついには現領地の保持が不可能と判断、

平州へいしゅう治所の和龍わりゅう幽州ゆうしゅう治所の薊を焼く。

敵の手に渡るくらいなら焼き払え、

ということだ。

残された兵力三万を引き連れ、

壺關こかんに脱出した。


このときぎょう

慕容垂に攻め立てられていた、苻丕ふひ

鄴の確保が絶望的だと判断、

長安ちょうあんに逃れようと考える。


情勢を読んだ王永、苻丕に使者を飛ばす。

我々と合流しませんか、というわけだ。

そこで苻丕は鄴の男女六万人余りを連れ、

潞川ろせん沿いに脱出。


張蚝ちょうこう王騰おうとうには

壺關の北西にある晋陽しんように入らせ、

苻沖ふちゅうには壺關を守らせる。

そして自らは一万の軍勢を率い、

苻丕の出迎えに上がった。


王永と合流した苻丕、

そこで初めて苻堅ふけんの死亡を知る。

服喪につくとこそ宣言したものの、

のんびりはしていられない。

皇帝即位を告げた上、大赦、改元。

って誰を許したの?


苻丕の推戴に功のあった王永は、

使持節、侍中、都督中外諸軍事、

車騎大將軍、尚書令、清河せいが公に。

直後には司徒、錄尚書事、左丞相に。

細かいところはいいです。

「苻丕の副官として認められた」

とさえ認識すればよろしい。


満を持して王永、檄文を発布。

その内容は既に苻丕伝で示したとおり。

ざっくり内容を言えば

「みんなで姚萇ようちょう潰そうぜ!」である。




永乘勝長驅,進據唐城,與慕容麟相持。慕容垂復遣慕容佐與平規共攻薊,永力戰屢敗,乃使宋敞燒和龍及薊城宮室,帥眾三萬奔壺關。長樂公丕時在鄴城,將西赴長安,永遣使招之,丕率鄴中男女六萬餘口,西如潞川。驃騎張蚝、刺史王騰迎入晉陽,永留刺史苻沖守壺關,自率眾一萬赴丕。丕始知長安不守。及堅凶問,乃發喪,即皇帝位,大赦,改元。以永為使持節、侍中、都督中外諸軍事、車騎大將軍、尚書令,進封清河公,尋加司徒、錄尚書事、左丞相,宣檄四方,共討姚萇。


永は勝ちに乘じ長驅し、進みて唐城に據し、慕容麟と相い持す。慕容垂は復た慕容佐を遣わせ平規と共に薊を攻ましめ、永は力戰せど屢しば敗れ、乃ち宋敞をして和龍、及び薊城が宮室を燒かしめ、眾三萬を帥し壺關に奔る。長樂公の丕は時に鄴城に在り、將に長安に西赴せんとせば、永は使を遣りて之を招ぜしむ。丕は鄴中の男女六萬餘口を率い、西のかた潞川に如く。驃騎の張蚝、刺史の王騰は晉陽に迎え入れ、永は刺史の苻沖に壺關を留め守らしめ、自らは眾一萬を率い丕に赴く。丕は始め長安の守らざるを知り、堅が凶を問うに及び、乃ち發喪し、皇帝位に即き、大赦、改元す。永を以て使持節、侍中、都督中外諸軍事、車騎大將軍、尚書令と為し、封を清河公に進め、尋いで司徒、錄尚書事、左丞相を加え、「共に姚萇を討たん」なる檄を四方に宣ず。


(十六国42-23_衰亡)




現代人的観点から無慈悲に王永のふるまいをぶった切るぼく「典型的ザコ悪役じゃねこれ?」


なんだろうなぁ、判断の速さとかから考えて、平時の緊急事態には強そうなんだ、平時の……。


それにしても王騰さん、重要人物っぽいですねー。この人のこともっと詳しく知りたいもんですが、どうなのかしらね。

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