索泮1  涼州の能吏   

索泮さくはん



索泮。字は德林とくりん燉煌とんこうの人だ。

地元の名族の家門であった。

若い頃には遊び呆けていたが、

成長するに従って学問に目覚め、

その統治者としての才能を開花させた。


ときは前涼ぜんりょう末期。

ラストエンペラー張天錫ちょうてんしゃくが実権を握ると、

索泮をその書記官に任じた。

張天錫が簒奪をなせば、それに伴い

国政、防衛の中枢に。

その執務により地方の政治は肅然とし、

近衛軍に配されれば精勤を讃えられた。


やがて地方に出鎮。

中壘將軍、西郡さいぐん武威ぶい太守、典戎校尉に。

その方針は政務は寛和なものであり、

領民はみな索泮を慕った。


張天錫もまた索泮を大いに敬っており、

前涼滅亡の際には、苻堅ふけんのもとに

索泮も謁見することに。


苻堅、索泮を見て嘆息した。


涼州りょうしゅうは信頼に値する土地柄だな。

 会うもの会うもの、みな君子だ」


索泮の声望を元々聞き及んでいた苻堅、

さっそく別駕に任じ、

まもなく建威將軍、西郡太守となった。




索泮、字德林、燉煌人也。世為冠族、少時游俠、及長變節好學有佐世才器。張天錫輔政、以泮為冠軍、記室參軍。天錫即位、拜司兵、曆位禁中、録事。執法御掾、州府肅然、郡縣斂。迹遷羽林左監、有勤幹之稱。出為中壘將軍、西郡武威太守、典戎校尉。政務寛和、夷夏懐其惠。天錫甚敬之。後從天錫、歸仕於秦。堅見而歎曰:「涼州信多君子。」既而以泮河西德望、拜為別駕、尋遷建威將軍、西郡太守。


索泮は字を德林、燉煌の人なり。世の冠族為りて、少き時に俠に游び、長ぜるに及びて變節し學を好み佐世の才器を有す。張天錫の輔政せるに、泮を以て冠軍、記室參軍と為す。天錫の即位せるに司兵を拜し、位は禁中、録事を曆す。御掾にて法を執らば、州府は肅然とし、郡縣は斂ず。迹た羽林左監に遷り、勤幹の稱を有す。出でて中壘將軍、西郡武威太守、典戎校尉と為る。政務は寛和にして、夷夏は其の惠に懐く。天錫は甚だ之を敬う。後に天錫に從いて秦に歸仕す。堅は見て歎じて曰く:「涼州は信なり、君子は多し」と。既にして泮が河西の德望を以て、拜し別駕と為り、尋いで建威將軍、西郡太守に遷る。


(十六国42-5_為人)




索泮さんは西方関係だから、ここまで全然出てきませんでした。そして例によっていまわの際のセリフがかっけえのです。いや、正直活躍するシーンをもっと見せてほしいって感じなんですけどね……。

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