姜宇   天水郡冀県のひと

姜宇きょうう



姜宇、字は子居しきょ天水てんすい冀北きほく県の人だ。

つまり三國志の姜維きょういの同族である。

珍しい!


とは言え姜宇、幼い頃に父を失い、

貧乏暮らしとなってしまった。

なので河北かほくのひと、陳不識ちんふしきの家に雇われ、

陳家の家畜管理の仕事にありついた。


その頃、姜宇は 15 歳。

身長は既に 185 センチを超えており、

賢くて、イケメンだった。


仕事を終えた夜には常に読書をし、

眠るときは立ったまま、

家の梁に頭を引っ掛けた状態で。

明け方には誰よりも先に起きた。


陳不識としては、この牧童やべえ、

そう思わずにはおれなかった。

なので娘を妻にしたい、と思う。

が、奥方は許さない。

牧童なんぞに、娘を遣るわけには!

というわけである。


そこで陳不識は一計を案じる。

姜宇をタイマン飲みにつきあえと誘い、

娘を物陰に潜ませておく。

この時、娘には言う。


「姜宇ヤバい。養子にしたい。

 なのでお前の夫に迎えたいのだ。

 ただ、かあさんがな。説得のためにも、

 まずはお前の気持ちを聞きたくてな」


娘は答える。


「姜宇は、確かに今は牧童です。

 けれど、そこで終わりになるようには

 到底見えませんわ」


こうして、遂に二人は結婚した。


やがて苻堅ふけんに仕えると、

屯騎校尉、南巴校尉を担う。

更には涼寧ねいりょう二州刺史、京兆けいちょう尹、

御史中丞と歴任。

国内でもトップクラスの

文武両道の人間出ないと無理な職歴だ。


淝水ひすいののち、姜宇を尚書、前將軍に。

そして苻琳ふりんとともに慕容沖ぼようちゅうと戦い、

敗死した。




姜宇、字子居、天水冀北人也。少孤貧、為河北陳不識家牧羊。年十五、身長七尺九寸、聰慧美丰儀。每夜專讀書、睡則懸頭於屋梁、逹旦而止。不識竒之、將妻以女。其妻不聽。識乃置酒、引宇、令女濳觀之。問女曰:「姜宇文士才明。吾欲以汝妻之。汝母難宇家之牧人、汝意云何?」女曰:「觀宇之姿才、豈終復為人牧羊者哉。」遂妻之。宇後仕堅、屯騎南巴二校尉、遷涼寧二州刺史、曆京兆尹、御史中丞。淮南之敗、宇以尚書、領前將軍。與河間公琳擊慕容衝、為衝所殺。


姜宇は字を子居、天水の冀北の人なり。少きに孤貧となり、河北の陳不識が家の牧羊と為る。年十五にして身長は七尺九寸、聰慧にして丰儀は美し。每夜に專ら讀書し、睡れるに則ち屋梁に頭を懸け、旦に逹せるに止む。不識は之を竒とし、將に女を以て妻せんとせるも、其の妻は聽さず。識は乃ち酒を置き、宇を引き、女に令し濳かに之を觀さしむ。女に問うて曰く:「姜宇が文士の才は明。吾は汝を以て之に妻せしめんと欲す。汝が母は宇の家の牧人なるに難ぜど、汝が意は云何?」と。女は曰く:「宇の姿才を觀るに、豈に終には復た牧羊の者たる為人なるかな?」と。遂に之を妻す。宇は後に堅に仕え、屯騎、南巴の二校尉となり、涼寧二州刺史に遷り、京兆尹、御史中丞を曆す。淮南の敗にて、宇を以て尚書とし、前將軍を領せしむ。河間公の琳と慕容衝を擊てど、衝に殺さる所と為る。


(十六国42-5_衰亡)




名族以外で三國志の同族人が出てくるのって珍しいですね。ちょっとうれしい。しかし微妙に姜維と運命も似た感じですね。反乱こそ起こしてないけど、亡国に最後まで身をあずけた辺りとか。いやぁ、大変なイケメンでございました。ごちそうさまです。


しかし龍陽(ホモ)の相のイケメンバーサス正統派イケメンか……これはなんのご褒美なのかな……? で、苻琳もまたイケメンだったんでしょう? オッホ

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