苻丕10 王永の敗死   

苻丕ふひは南下の準備を整える。

王騰おうとう晉陽しんようを守らせ、

楊輔ようほ壺關こかんを塞がせ、

自身は四万の兵で平陽へいように駐屯。


一方、王統おうとうは秦州を手土産とし、

姚萇ようちょうに降伏した。

これで前秦勢力は西部を

大きく失ったことになる。


そこへ慕容永ぼようえいが苻丕のもとに

使者を飛ばしてくる。

このままでは苻丕に攻めかかられる、と

見越してのものだったのだろう。


内容は「東に抜けたいので、

領内を通過させて頂きたい」

と言うものだった。


苻丕、その要求を突っぱね、

王永おうえい苻纂ふさんに兵を率いさせ、

また俱石子ぐせきしに前衛を務めさせ、

襄陵じょうりょうにて慕容永と激突。


結果は、慕容永の完勝。

王永と俱石子は戦死した。




丕留王騰守晉陽,楊輔戍壺關,率眾四萬進據平陽。王統以秦州降姚萇。慕容永以丕至平陽,恐不自固,乃遣使求假道還東,丕弗許。遣王永及苻纂攻之,以俱石子為前鋒都督,與慕容永戰於襄陵。王永大敗,永及石子皆死之。


丕は王騰を留め晉陽を守らしめ、楊輔に壺關を戍らしめ、眾四萬を率い平陽に進據す。王統は秦州を以て姚萇に降ず。慕容永は丕の平陽に至れるを以て、自ら固めざるを恐れ、乃ち使を遣りて假道にて東に還ぜんことを求めど、丕に許したる弗し。王永、及び苻纂を遣りて之を攻めしめ、俱石子を以て前鋒都督と為し、慕容永と襄陵にて戰う。王永は大敗し、永、及び石子は皆な之に死す。


(晋書115-10_衰亡)



おぉ、この流れって普通苻丕さんが大勝するやつじゃないですか……こう言うの見てると、やっぱり慕容永は慕容永で規格外の強さの持ち主だったんだろうなーって思うのですよ。さすが慕容、戦闘民族。しかしナンバーワンははるかに格上だった。


そんな格上の慕容垂ぼようすいに対して年単位で守城戦を繰り広げた苻丕もやっぱりすごい。みんなすごい。戦争って本当にリソースのつぶし合いですねー。


ところで、魏書には苻丕さんの慕容永に対するお言葉が残っているので紹介しときましょう。


丕弗許,怒曰:「永乃我之馬將,首亂京畿,禍傾社稷,承凶繼逆,方請逃歸。是而可忍,孰不可恕!」

東に行きたいので行かせて? と言ってくる慕容永に対して切れた苻丕は言う。「あの鮮卑は元は我々の馬飼いだというのに長安を荒らし、国をズタズタにした。さらには慕容沖の無道を引き継いでさらに暴れ回っておったくせに、逃がしてください、と俺には言うわけだ! どうして忍んでおれようか、どうして許せなどしようか!」


うーん、なめられたら殺さないと永遠に搾取される惑星のお話はきついですなー。

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