第4話提携


「そうですか、そんなに太っていたんですか」


洒落たカフェで、私はスカウトの人と話していた。


「そうなんです、あの体重計で最初は痩せたんですけれど、今は自分でも体重を制御できているようなので」


「そうですか、その話は面白いですね」


と言うので、私はすぐに名前の知られた芸能事務所に入ることになった。でもそこが「戦いの場」であるとも知っていた。女優になるにせよ、タレントになるにせよ、それほど簡単な事ではない。


「支えてくれる人がいるといいんだけれどね、ちょっとした会社の人とか」とスカウトの人から言われたので、私は


「じゃあ、あの体重計の会社に話してみます」


「それはいいね、そうだよ、そういう行動力は、この世界で生きていくにはとても大切な事だ。まずは自分で直談判してみて、これも経験だよ」


「そうですね、わかりました」


と私は体重計の会社に連絡を取ったが、なかなか電話がつながらず、やっと話ができたと思ったら、思いのほか部署をたらい回しにされた。



「あの、私が芸能事務所にはいれたのは、この体重計のお陰だと思っているんです。そのことをインタビューで言いたいんです」


始めから「私を広告塔に使ってくれ」とは言いださなかったが、丁度良いのではと考えた。この体重計は本当に「口コミ」で広がり、テレビなどで大きく宣伝などはしていない。有名人が使っているという話も聞かないから、私が一号になれば、ようは「ウインウイン」の関係になるはずなのだ。

しかし会社の対応は不思議だった。


「すいませんがこの体重計を使っていることは極秘にしてください。細々と造っているので、大きく報道されると製造が間に合わず、また、急に過剰在庫を抱えることにもなりかねませんので。すいませんがよろしくお願い致します。体重計も送り返してくださいませんか? 」


 私としては信じられないことを言われた。



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